本研究は、人工林が優占する景観も含む多地点調査を全国規模で行い、全国スケールでの夜行性鳥類各種の分布に対する人工林とその伐採の影響を天然林と比較して明らかにした。これにより、広域的な生物多様性の保全を考える上での人工林の重要性を考察した。 まず、人工林とその伐採が夜行性鳥類に及ぼす影響を明らかにするため、夜行性鳥類の生息評価手法を確立させた。具体的には、文献レビューと現地調査によって効果的な調査手法と解析方法を明らかにし、全国各地で夜行性鳥類の繁殖期(5月中旬~8月上旬)に、各地点で調査を3回行った。これまでに共同研究者と共に取得・整理したデータと合わせ、1653地点という夜行性鳥類の大規模データを取得した。 次に、ヨタカの生息確率に林種(人工林、天然林)と人工林の主伐(周囲 500 mの幼齢林率)、標高が及ぼす影響を、統計モデルで調べた。その結果、人工林の主伐により準絶滅危惧種に指定されているヨタカの生息確率が大きく増加することを示した。一方、ヨタカは成熟した人工林よりも天然林で生息確率が高くなる傾向がみられた。これらの結果は、全国的な減少が指摘されてきたヨタカの保全に、近年増加している人工林の主伐が大きく役立つことを示唆している。人工林の生息地としての機能や管理が各種生物に及ぼす影響を広域的に評価する本研究のようなアプローチは、生物多様性の保全に配慮した人工林管理手法の確立に向けて大きく貢献できることを示した。
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