研究課題/領域番号 |
21K20604
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
藤永 拓矢 福岡大学, 工学部, 助教 (40910633)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | スマート農業 / 農業ロボット / トマト収穫ロボット / 収穫しやすさ / 生育状態マップ / 収穫戦略 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は収穫ロボットにおける「収穫しやすさ」を定量化し,それを収穫戦略に適用した自動収穫システムを構築することである. 本年度の研究実施計画では,「収穫しやすさ」の定義及び定量化に着手する予定であった.また,本研究ではトマトのみを対象に進める予定であった.しかし,トマトと同様に高い商品価値のあるイチゴも対象とするべく,本年度は一般的なビニールハウス内で移動可能で汎用的な農作業支援ロボットの研究開発に着手した. 本年度の研究実績は1)農作業支援ロボットの開発,2)実環境における動作試験の実施である. 1)イチゴを栽培するビニールハウスの視察,農業従事者へのヒアリングを実施し,農作業支援ロボットの仕様を検討し,その試作機を開発した.試作機の大きさは縦280mm,横310mm,高さ1090mmであり,ビニールハウス内の狭い栽培ベッドまたは畝間(約300mm)を走行可能である.その構成要素に関して,施設内を移動するためのクローラ型の移動機構,地図構築及び自己位置推定のための2次元レーザスキャナとトラッキングカメラ,農作業を遂行するための4自由度垂直多関節型のマニピュレータ,植物や収穫対象物を認識するためカメラである.また,ロボット制御用のPCとバッテリーを搭載しており,遠隔操作及び自律動作が可能な構成になっている. 2)栽培する作物及び栽培方法が異なる3つのビニールハウスで本ロボットの動作試験を実施した.各ビニールハウスにおける作物及び栽培方法に関して,それぞれイチゴの高設栽培,様々な野菜(トマト、ピーマン、キュウリなど)の土耕栽培,ハーブの高設栽培である.本ロボットは汎用的な農作業支援ロボットを目指しているため,異なる実環境での動作試験を実施した.実験によって得られた知見として,静的な物体(畝や栽培ベッドなど)と動的な物体(農具など)の識別が重要であることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
対象とする農作物をトマトのみではなくイチゴも対象とし,ビニールハウス内で移動可能で汎用的な農作業支援ロボットの開発に注力したため,当初の計画より遅れが生じた.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の遅れを踏まえ次年度ではA)「収穫しやすさ」の定量化,B)収穫戦略の構築及び検証に着手する. A)これまでの知見から「収穫しやすさ」の指標として遮蔽率が挙げられた.しかし,その指標はロボットの構成要素によって異なる.ロボットの構成要素を考慮し,遮蔽率だけでなく周囲の障害物,マニピュレータの自由度などの指標を評価し,「収穫しやすさ」の定量化手法を検討する. B)これまでにトマト果実の生育状態を可視化した生育状態マップに関する研究に取り組んできた.生育状態マップは栽培領域の果実の位置や生育状態(成熟度や収穫時期)などの情報が付加されている.収穫戦略の構築にあたり,生育状態マップ内の果実の位置や成熟度,そして「収穫しやすさ」に基づき効率的に自動収穫する戦略(例えば,収穫しやすい果実から優先的に収穫する)を構築し,実環境での検証を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
端数が残ったため次年度使用額に計上した.消耗品の購入に使用する.
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