ルジョウイルス(LUJV)はアレナウイルス科に属し、ヒトに致死的な出血熱を引き起こす。LUJVは2008年にアフリカ南部にて一時的なアウトブレイクを引き起こしたが、以降感染者の報告はなく、疫学調査でも検出されておらず、その生態は謎に包まれている。またその希少性故にワクチンや抗ウイルス薬は開発されていない。本研究ではLUJV受容体であるCD63に着目し、LUJVの宿主域の解明や抗ウイルス薬の開発を目指した。 これまでの研究からヒトCD63のC末端側のループ構造(LEL)のうち141~150番目のアミノ酸配列がLUJV感染に重要であることがわかっている。変異体ヒトCD63を用いた解析から143番目のフェニルアラニン(F143)がLUJV感染に重要であることが明らかになった。F143は一部のげっ歯類を除いた哺乳類で広く保存されており、LUJVは広い宿主域を有することが示唆された。CD63はLUJVの表面糖タンパク質(GPC)との相互作用することが示唆されたため、Biacoreを用いた分子間相互作用解析を行った。しかしながらLUJV GPCとCD63の相互作用は非常に弱く、その他の分子が相互作用に影響することが考えられる。ヒトCD63の141~150番目のアミノ酸配列を基に合成した部分的CD63ペプチドによるPVSV-LUJVに対する感染阻害効果を検証したが、感染抑制は認められなかった。LUJVに対する中和抗体の作出を目指し、分泌型組換えLUJV GPCをマウスに免疫し、ハイブリドーマを樹立し高い活性を示す中和抗体を得た。さらに、EGFP-HiBit発現HEK293細胞とmCherry-LgBit発現HEK293細胞を作製し、低pH下でのLUJV GPCによる細胞間膜融合の新たな評価系を樹立した。
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