研究課題/領域番号 |
21K20611
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大谷 祐紀 北海道大学, 獣医学研究院, 博士研究員 (10909857)
|
研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
|
キーワード | 腎臓 / 生殖器 / 糸球体腎炎 / 糸球体硬化 / 性ホルモン / テストステロン / ボウマン嚢上皮細胞 |
研究実績の概要 |
哺乳類には通常“雄と雌”が存在し、この解剖・生理学的区別は各種病態の差異を生む。免疫や腎疾患には顕著な“性差”がみられ、その病態発生には性ホルモンが中心的役割を果たすが、詳細な機構および性腺を摘出した動物への長期的な影響は不明である。申請者は、自己免疫疾患モデルマウスの精巣摘出は糸球体硬化性病変を軽減させ、その病理にはボウマン嚢上皮細胞の機能形態変化が関与することを見出した。本研究では、雄性ホルモンによるボウマン嚢上皮細胞制御機構を、性が関与する糸球体硬化病態発生論の核心と捉え、その解明を目指す。 我々はこれまで、精巣摘出による自己免疫性糸球体腎炎病態の変化にはボウマン上皮細胞がCD44をde novo発現することが重要であると見出している。2021年度は、新たな腎炎モデルマウスにおけるボウマン嚢上皮細胞のCD44発現について精査した。BXSB/MpJ-YaaマウスはY染色体上遺伝子変異により雄でのみ重篤な自己免疫性糸球体腎炎を呈する。一方、MRL/MpJ-Faslpr/lprは自己反応性T細胞の異常により、雌雄ともに糸球体腎炎を呈するモデルである。雄のBXSB/MpJ-Yaaと比較し、雌雄のMRL/MpJ-Faslpr/lprでは、CD44発現ボウマン嚢上皮細胞が少ない傾向にあった。今後、MRL/MpJ-Faslpr/lprに性腺摘出を施し、BXSB/MpJ-Yaaと同様にテストステロンがその病態に関与するか精査する。 また、糸球体とボウマン嚢上皮細胞との機能関連を明らかにするため、集めた腎小体を糸球体とボウマン嚢上皮細胞に分離するより良い方法について検討を重ねている。現在はマグネットビーズ法で回収を行っているが、メッシュ法等、一個体からより多くの糸球体とボウマン嚢を回収する他の手法も検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ボウマン嚢上皮細胞が付いた糸球体の回収に苦慮している。ボウマン嚢上皮細胞の回収は本研究の核心であり、効率よく回収できる方法を検討している。
|
今後の研究の推進方策 |
雄と雌のMRL/MpJ-Faslpr/lprマウスを用い、精巣摘出群および卵巣摘出群を作出する。さらに、濃度の異なるテストステロン徐放剤を皮下に埋植し、テストステロンが糸球体硬化性病変に関与する病理発生機序を明らかにする。特に、回収した腎小体からボウマン嚢上皮細胞を分離・培養し、テストステロン刺激前後で変化する因子をマイクロアレイで網羅的に選抜する。また、有意に発現が増加する分子群の腎臓内局在を免疫染色で同定し、ボウマン嚢上皮細胞で発現する分子を特定する。さらに、分離した糸球体を、特定したボウマン嚢上皮細胞関連分子蛋白で刺激する。硬化性病変の関連分子群(TGF、細胞外マトリックス等)の発現をPCR法、細胞染色やイムノブロッティングで定量し、ボウマン嚢上皮細胞と糸球体が関連する病理形成メカニズムを明らかにする。
|