研究課題/領域番号 |
21K20617
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
増田 豊 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (80514728)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | ゲノミック選抜 / 予測育種価 / 不完全な血統 / 予測モデル / 量的遺伝学 |
研究実績の概要 |
シングルステップ法は、観測データ、血縁関係、ゲノム情報を結びつけることで個々の育種価を予測し、特に情報量の少ない若齢個体の選抜の正確度を向上させるゲノミック選抜手法である。血縁情報はしばしば欠損するため、血統表の不明親に「仮親」を割り当て、育種価予測値の偏りを軽減するモデルが提案されている。本研究の目的は、血縁関係に欠損がある場合に、情報量の欠落に応じて育種価予測値がどのように偏るかを調査し、偏りの少ない最適な仮親モデルを提案することを目指す。 初年度である本年度は、シミュレーションにより、血縁にさまざまな欠損パターンをもつ疑似データを生成した。本研究の目的に沿ったデータを生成するため、既存のシミュレーションプログラムを修正した。そのシミュレーションは、乳用牛の繁殖構造を模したものであった。1頭の種雄牛が多数の後代牛を持ち、その後代牛(雌牛)が複数の群にまたがって飼養されていた。生成された直後のデータには血統情報の欠落がなかったが、事後的に母方の血縁情報を欠損させた。欠損のパターンとして、ランダムに血縁が欠損する状況、特定の種雄牛の後代に欠損が集中する状況、遺伝的能力の低い後代に欠損が集中する状況を想定した。ゲノム情報を用いないアニマルモデルBLUP法による遺伝能力評価を行うと、仮親を用いない場合には、いずれの欠損パターンにおいても遺伝的トレンドの過小推定がみられたが、その程度は欠損の程度に依存した。仮親を含めると、遺伝的トレンドは真値に近づいたが、仮親のもつ個体数が十分ではない場合にはバイアスを除去できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、2021年度にシミュレーションによる論理的検討を経て、2022年度に乳用牛の実データによる仮説の検証に移行する予定であった。シミュレーションに必要なコンピュータプログラムは、本研究の遂行にあたり修正する必要があったが、その改修に時間を要した。現在、データの生成と仮親モデルの検討は進行中である。一方、実データを用いた検証研究に関しては、分析可能なデータセットの準備が完了し、解析に取りかかることが可能となった。以上により、総体として、シミュレーション研究に遅れがある。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度には、シミュレーションデータの解析を通じて、血縁の欠損パターンと予測育種価の偏りとの関係を解明する。複数の欠損パターンと欠損する血縁情報量ごとに、予測育種価の偏りの視点から、最適な予測モデルを特定する。予測育種価の偏りは、真値と予測値との単回帰によって判定する。また、シミュレーション研究と並行し、実データの解析をすすめ、予測育種価の偏りを評価する。最も精密と想定されるモデルと簡略なモデルで、それぞれ予測育種価を算出し、その値を比較する。また、仮親を含めたモデルの実用度を評価するため、脱回帰法(de-regressrion)による表現型の逆算値を基準として用いる方法も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の直接経費では旅費を計上していたが、コロナウイルス感染防止の観点から、旅行を取りやめてオンラインミーティングに移行したため、旅費を使用する機会がなかった。また、一部の電気機器は、世界の半導体不足のあおりを受けて納期が遅れることとなったため、当該年度における購入を見送った。次年度においては、当初の予定通りに旅費を使用し、また、必要な機材も購入する予定である。
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