研究実績の概要 |
鼻腔疾患で来院し麻酔下検査で確定診断した犬103症例(アルゴリズム作成群)を用いて、シグナルメント・問診・身体検査、X線検査所見を組み合わせてアルゴリズムを作成した。作成したアルゴリズムを用いて鼻腔疾患54症例(検証群)において感度・陽性的中率を算出したところ、腫瘍はそれぞれ89.7%, 92.9%、鼻炎は81.8%, 75.0%であった。次年度も検証群の症例数を増やして解析予定である。 鼻腔スワブサンプルは、確定診断を行った鼻腔疾患を有する犬10頭および対照として正常犬9頭から採取した。鼻腔スワブは①犬が鎮静処置などを行わずに覚醒している状態で外鼻孔経由、②また診断のための検査を行う際に麻酔下で鼻腔の深部から採取、鼻炎の症例では③鼻腔洗浄後の鼻腔からスワブを採取した。採取したスワブからDNAを抽出後、16S rRNA遺伝子解析を実施し、シグナルメント・採取方法および疾患間による細菌叢構成の比較を行った。いずれの症例も一般的な細菌培養検査および犬呼吸器感染症PCR検査(IDEXX社)において、感染体は検出されなかった。また品種、年齢、体重などのシグナルメントによる細菌の数および種類の違いは認められなかった。疾患間における違いとしては、採取方法②における結果から、腫瘍および鼻炎において特定の細菌の増減が認められた。採取方法が異なる①および②では全体的な傾向は似ているが一部で異なる結果が得られたため、鎮静処置を行わないでスワブを採取する場合は鼻腔吻側の細菌叢を反映することや口腔内細菌叢が混在することが明らかとなった。採取方法③は①および②に比較すると多くの細菌数が検出され、細菌叢の分布も異なっていたため、鼻腔に鼻汁が多く貯留している状態であると鼻粘膜における真の細菌叢が検出できないことが示唆された。次年度も症例数を蓄積する予定である。
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