研究実績の概要 |
パンデミックの影響により、研究のために必須であった計算機の納品が行われたのが2022年の1月であった。そのため現時点における研究の進行は限定的なものである。 本研究は「休眠状態」と呼ばれる、微生物が飢餓状態で示す状態に関する理論研究である。休眠状態において微生物細胞は成長しない代わりに抗生物質などの幅広いストレスに耐性を示すことが知られている。また、この状態において代謝物質の濃度は非定常状態であることを示す実験的証拠が近年多く報告されており、動力学モデルにおける理解の重要さが認識されている。 本来の研究計画においては、KEGGなどの代謝反応データベースより代謝ネットワークを取得し、自らそれらのモデル化を行う予定であった。しかし本研究課題のシードとなった論文(Himeoka & Mitarai, bioRxiv 2021)に対する批判を鑑みて、自らのモデル化を行うのではなく、A. Khodayari, et al., Met. eng. 25 (2014): 50-62. や R. Z. Thornburg, et al., Cell, 185.2 (2022): 345-360. など、現存する大腸菌代謝システムの動力学モデルを詳細に調べることにした。これらのモデルをシミュレーションすることを通じて、異常緩和を示すための条件についていくらかの仮説をえることが出来たため、現在それらの検証を行なっているところである。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度の研究で得られた、代謝ダイナミクスにおいて異常緩和が出現する条件に関する仮説を検証する。具体的にはまず、ボトムアップ的にミニマルモデルを作成してメカニズムを抽出し、その後に生物学的にリアリスティックな代謝モデルにおいてもボトムアップモデルと同等のメカニズムが働いているかを確認する。 大腸菌の代謝モデルとしてはA. Khodayari, et al., Met. eng. 25 (2014): 50-62. や R. Z. Thornburg, et al., Cell, 185.2 (2022): 345-360. といった、すでに構築されているモデルを用いることを予定している。
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