研究実績の概要 |
申請者はこれまでに、ヒト体細胞へと転写因子を強制発現させることにより、肝細胞及び神経細胞へのダイレクトリプログラミングに成功している。マウス細胞を用いた肝細胞へのダイレクトリプログラミングは、FoxaとHNF4aの2因子の強制発現により肝細胞へのリプログラミングが起きるのに対し、ヒト細胞を用いた場合はFOXA, HNF1A, HNF6の3つの因子が必要であることがわかった。また、神経細胞へのリプログラミングも同様に、マウスのミクログリアは、たった一つの転写因子であるNeuroD1をミクログリアへと強制発現させることで神経細胞へとリプログラミング可能であることに対して、ヒト細胞を用いた場合はNeuroD1だけではリプログラミングが起こらず、複数個の転写因子が必要であることが明らかとなった。これらの事実から、申請者はヒト細胞には、マウス細胞とは異なり、リプログラミングを阻むバリア機構が存在することを見出した。そこで本研究では、ヒトの19,000遺伝子を欠損させることが可能なCRISPR libraryを用いて、ヒト細胞特異的バリア因子を同定し、ヒト特異的なリプログラミングバリア機構の解明に挑む。本研究が成功した暁には、ヒト細胞における神経細胞及び肝細胞への飛躍的かつ高効率なリプログラミングが実現可能となり、様々な疾患、損傷に対する臨床応用実現へと大きく貢献することが可能となることが期待される。
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