申請者はこれまでに、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)へ6種類の転写因子を導入することにより、ヒト神経細胞へとダイレクトリプログラミングできることを見出している。また、ヒト細胞を用いたリプログラミングでは、マウス体細胞から神経細胞を分化転換する際と比較して、より多くの転写因子が必要であることや、神経細胞へと分化転換するまでの時間が多くかかることから、ヒト細胞にはリプログラミングを阻むヒト細胞特異的なリプログラミングバリアが存在することが示唆される。そこで申請者は本研究遂行により、ヒト特異的なリプログラミングバリア因子を明らかにすることを目的として本研究を進めた。バリアとして機能 する候補因子の選定方法として3つの手法を実施した。1つ目は公共データを用いて、ヒト特異的またはヒト細胞において高発現している遺伝子に着目し、バリア候補となりうる遺伝子のノックダウン実験を実施する方法、二つ目は神経細胞および他の細胞へのリプログラミングの際にリプログラミング効率を上昇させる効果のある阻害剤などのケミカルを用いてバリアを破綻させる因子を探索する方法、3つ目はCRISPR Knockout pooled libraryを用いて、網羅的にバリア候補因子を選定する方法を実施した。その結果、ノックダウンの実験において複数のバリア候補因子を得ることに成功した。また、10種類のケミカルを処理することによりリプログラミング効率が飛躍的に上昇することも見出した。
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