研究課題
NLRP3インフラマソームと呼ばれる蛋白質複合体を介した炎症誘導は病原菌に対する恒常性維持に必須の自然免疫系の一種であり、その異常は神経変性疾患など様々な疾患の一因となり得る。最近の研究により、免疫細胞が細菌由来リポ多糖(LPS)などを感知することでミトコンドリアゲノム(mtDNA)が速やかに複製され、細胞内mtDNAコピー数が3倍に増加することが報告された。次いでさらなるmtDNA修飾によりNLRP3活性化に必須のmtDNA由来シグナルが産生される。一方で、炎症時におけるmtDNA複製モードは解析されておらず、その促進メカニズムと制御様式は未解明である。本研究では特にNLRP3炎症反応の起点となるLPS依存的mtDNA複製における複製モードとその制御様式の解明を目指す。申請者は研究計画に沿ってLPS刺激時におけるmtDNA複製促進機構の解析を進めた(九州大学大学病院検査部 後藤 和人 助教、現:東海大学医学部 准教授との共同研究を含む)。マウス由来マクロファージ細胞などの培養細胞系を用いてLPS刺激を行い、定量PCR法を用いてmtDNAコピー数変化の検出を複数回試みたが過去の報告(Zhong et al., 2018 Nature)に見られるようなLPS依存的mtDNAコピー数の増加は見られなかった。このような背景から申請者は第二の計画としていた試験管内mtDNA複製系の構築を目指し、ミトコンドリア由来蛋白質抽出液と精製mtDNAとを混ぜることにより部分的に複製反応を誘導させることに成功した(九州大学理学研究院 高橋 達郎 教授との共同研究を含む)。加えて、精製ミトコンドリア画分を用いたmtDNAコピー数解析系を独自に構築し、新たなミトコンドリア遺伝学の基盤形成に貢献した。本研究を基盤に炎症応答におけるmtDNA複製制御の解明が期待される。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Journal of Biological Chemistry
巻: 298 ページ: 102051~102051
10.1016/j.jbc.2022.102051