自己免疫疾患の発症リスクの30-40%はゲノム配列の個人差(多型)により決定される。遺伝子多型情報の個人差をヒト集団の中で解析するゲノムワイド関連解析は、ノックアウトマウス実験と同様に疾患の原因を議論できる解析法であり、自己免疫疾患のリスク多型を多数同定している。大半のリスク多型は遺伝子発現調整領域に局在し、近傍にある遺伝子の発現調整の異常を介して疾患リスクを高めると推定されている。そして、その多型の機能は疾患特異的な転写因子により制御されると考えられている。しかし、具体的にどの転写因子がリスク多型の機能を特異的に制御しているのかを実験的に確認した例は極めて数なく、自己免疫疾患の病態解明のボトルネックとなっている。 本研究の目的は、①自己免疫疾患のリスク多型の機能(=遺伝子発現制御)を効率的に定量評価する実験系を確立し、②転写因子ノックアウトの実験を併用することで、どの転写因子がリスク多型の機能を制御しているかを実験的に確認することである。 最終年度(R4年度)は、ATAC-seqを用いたアレル特異的解析の実験系を完成させた。そして、我々が報告した関節リウマチのリスク多型に実際に応用を開始している。アレル特異的解析はリスク多型の機能を“アレル比”というシンプルな指標で評価する効率的な実験系である。さらに、関節リウマチの発症に関与する候補転写因子をsiRNAを用いて効率的にノックアウトする実験系の併用も開始した。本研究の継続によって、自己免疫疾患の病態で中心的な役割を担う転写因子を網羅的に検索できると期待される。
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