研究課題/領域番号 |
21K20650
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松本 光梨 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (10914153)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 胚発生 / カルシウム / ライブイメージング / 細胞内動態 / シロイヌナズナ |
研究実績の概要 |
発生には、細胞分裂の方向と時期といった空間と時間の制御の連携が重要である。植物の受精卵では、細胞伸長や核の移動という極性化が非対称分裂に必須だと判明している一方で、分裂タイミングを決める時間的制御の理解は進んでいない。近年、代表者らは、シロイヌナズナ受精卵のライブイメージング系を確立させ、世界で初めて受精卵の内部動態を追跡することに成功した。例えば、受精卵内部で上下に配向したアクチン繊維に沿ってミトコンドリアが連結して上方向に移動するという極性化動態や、極性化の完了後に非対称分裂する間だけ、ミトコンドリアが球状に分離し、娘細胞への不等分配を助けるという役割を明らかにした(Kimata et al, 2020)。このことから、受精卵では、極性化の完了と非対称分裂のタイミングを適切に連動させる時空間連携の仕組みが存在し、それによって細胞内事象が制御される可能性を見出した。そこで代表者は、多数のマーカーや阻害剤を駆使したライブイメージングにより、時空間連携に関与する事象の時系列を明らかにすることにした。まず、これまでのライブイメージング手法を改良することで、細胞内動態をより高い時間分解能で捉えることに成功した。さらにカルシウムイオンや細胞内構造の蛍光標識株を用いたキモグラフ解析により、細胞伸長や核の移動、Ca波の変化といった各事象がどのような順序で起こるのかを明らかにした。現在、細胞周期の進行との関連性を明らかにするため、作出した細胞周期と細胞膜の多色株の解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの影響により、本研究を進めるうえで欠かせない二光子励起顕微鏡の納期が延期されライブイメージング解析に少し遅れが出たものの、解析法の改良やキモグラフ解析により各事象の時間的変化を捉えられた。
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今後の研究の推進方策 |
受精卵の細胞伸長に重要な微小管と、核やオルガネラの移動を担うアクチン繊維のそれぞれの阻害剤を投与し、極性化の完了の合図の実体を調べる。さらに、細胞周期と細胞膜の多色株の解析から、極性化時に起こる各事象の変化に細胞周期の進行が必須条件かを探る。さらに、植物受精卵を単離しRNA-seq解析を行い、時空間連携の実動因子を探索する。具体的には、局在マーカーと、発現阻害株を順次作出し、ライブイメージングと表現型解析を行い、時空間連携における役割を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの影響により、学会等がオンラインになったため旅費が想定よりも少なくて済んだ。次年度は当初の予定よりも、顕微鏡観察が増えるため、顕微鏡観察につかうガラスボトムディッシュといった消耗品に使用することを計画している。
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