発生には、細胞分裂の方向と時期といった空間と時間の制御の連携が重要である。植物の受精卵では、細胞伸長や核の移動という極性化が非対称分裂に必須だと判明している一方で、分裂タイミングの制御の理解は進んでおらず、どのようにして極性化の完了と非対称分裂のタイミングを適切に連動させているのか、その時空間連携の仕組みは不明である。初年度に代表者は、多数のマーカー株の作出やライブイメージング法の改良により、シロイヌナズナ受精卵において、Ca波の変化、細胞伸長、細胞周期の進行といった各事象がどのような順序で起こるのかを明かした。最終年度では、これらの変化の定量的解析を行った。例えば、受精卵では伸長速度が一定ではなく、分裂の直前に急速に早くなる時期が存在することを見出した(Rapid Growth Stage; RGS)。このRGSの前後ではCa波や細胞周期の進行にも変化がみられたことから、RGSは極性化の完了と分裂タイミングの同調に重要であることが示唆された。 次に各事象がどのように関連しているかについて解析した。受精卵におけるCa阻害剤の投与実験から、Ca波は細胞伸長を制御しており、またその制御には、細胞骨格の動態変化を介すことを見出した。 これらの結果から、受精卵は、Ca波が細胞骨格を制御することで伸長し、RGSにおいて極性化の完了と細胞周期の進行が連携することで非対称分裂に至ると想定される。 今後、RGSがどのようなメカニズムにより生み出され、どのようにして分裂面が決定されるのかについて、細胞骨格の動態や分子基盤を明らかにすることで、時空間連携の仕組みのさらなる理解につながると考えられる。
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