研究課題/領域番号 |
21K20651
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柳田 絢加 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (60906668)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | ナイーブ型多能性幹細胞 / ヒト胚発生 / 初期胚 |
研究実績の概要 |
本研究の要となるナイーブ型ヒトES細胞を実験に使用できるようにするために、日本および英国の倫理申請、所属研究機関での環境整備を行なった。マウスES細胞に比べナイーブ型ヒトES細胞は培養条件が洗練されておらず、多能性を維持したまま安定的にナイーブ型ヒトES細胞を高品質で長期培養することはまだ困難である。そこで本実験で用いるナイーブ型ヒトES細胞の樹立、提供先と同じ品質での培養条件確立を目指し、インキュベーターの酸素、二酸化炭素濃度、培養液、添加するサイトカインや阻害剤、ECM成分、フィーダー細胞数などの条件を詳細に検討した。その結果、OCT4やNANOGなどの多能性幹細胞マーカー、KLF17やSUSD2などのナイーブ型ヒト多能性幹細胞特異的マーカーの発現を維持し、ナイーブ型ヒト多能性幹細胞に特徴的なドーム型コロニーを安定的に形成可能な培養条件、環境の確立ができた。さらに本研究に必要なナイーブ型ヒトES細胞からブラストイドへの分化誘導を新な研究環境下でも再現可能にするため、分化誘導に必要な細胞数、培養プレート、遠心条件などを調整し、安定してブラストイドへの分化誘導が可能な最適な条件を決定した。さらに誘導したブラストイドを評価するための免疫染色、遺伝子発現解析方法の確立を行い、各系列の細胞数を定量的に評価する系を見出した。また、原始内胚葉系列の細胞数を増加させる培養条件を検討するため、二次元培養条件下でのナイーブ型ヒトES細胞からブラストイドへの分化誘導を行った。その際、適切な細胞数、サイトカインや阻害剤の添加時間、濃度の検討を行い、各系列の細胞数への影響を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の要となるナイーブ型ヒトES細胞を実験に使用できるようにするための日本および英国の倫理申請、所属研究機関での環境整備をすることができた。さらに新しい研究環境下でのナイーブ型ヒトES細胞の安定的に培養、ブラストイドへの分化誘導の再現ができた。またレポーター株作成へ向けた遺伝子導入条件、薬剤濃度の決定、ブラストイドへの分化誘導条件改良へ向けた最適な細胞数の決定、遺伝子発現解析へむけた基礎的な手技および解析方法の取得、確立ができた。以上より、本研究遂行に必要な基盤の確立および本研究における条件検討が進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度より所属の異動により新たな研究環境で実験を行うことが決定している。そのため、異動後は速やかに本研究遂行に必要な倫理申請、研究環境の整備に着手し、早期に実験を行えるよう努める。ナイーブ型ヒトES細胞からブラストイドへの分化誘導時に添加するサイトカイン・阻害剤の種類と濃度をさらに検討し、原始内胚葉数の上昇を目指し、より胚盤胞へ近いブラストイドへの誘導方法確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は主に本研究遂行に必要な培養環境、解析環境の調整および確立に当初計画していたよりも時間を要したため。2022年度は21年度に確立した基盤をもとに本研究遂行に必要だがまだ入手できていない機器や試薬の購入、また本研究計画の培養条件検討に不可欠なサイトカインや阻害剤の購入を行い研究目的の達成に努める。
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