研究課題
がんの細胞内環境における重要な因子として小胞体ストレス(ER ストレス)がある。がん細胞ではERストレスの主要分子であるPKR like endoplasmic reticulum kinase(PERK)は活性化していることが知られている。一方、これまで研究代表者らはPERK経路においてlong noncoding RNAであるRMRPが関与することを報告してきた。RMRPはミトコンドリアや核に存在するが、その役割については不明な点も多い。今回、肝がん細胞株において小胞体ストレスをはじめとする細胞内ストレス環境下でのRMRPの役割について検討した。まず、肝がん細胞株にツニカマイシンを添加して小胞体ストレスを誘導したところ、リアルタイムRT-PCR法、ウエスタンブロット法でPERKの発現は増加しRMRPの発現が抑制された。RMRPをsiRNAによりノックダウンしたところ、ルシフェラーゼアッセイ、ウエスタンブロット法でカスパーゼ 9の活性化がみられた。一方、カスパーゼ 8の活性化はみられなかった。更に、miRNAについても検討した。RMRPと相補的な配列を有するmiR-206の発現はRMRPのノックダウン群で上昇していた。RMRPによるアポトーシス誘導にはカスパーゼ9を介した内因性経路やmicro RNAが関与していた。次に、RMRPと血管新生因子の関係について検討した。RMRPのノックダウン群ではVEGF、PDGFについてリアルタイムRT-PCR法ではRNA発現量に有意差はみられなかった。これらの結果よりRMRPの低下は内因性アポトーシスに影響し、血管新生への影響は軽微である可能性が示唆された。RMRPはがん細胞の生存に影響を与えるため、肝細胞がんにおける治療標的となる可能性がある。
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