研究課題/領域番号 |
21K20662
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
浅岡 真理子 神奈川大学, 理学部, 助教 (80909888)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | シロイヌナズナ / 茎 / 形態形成 / 遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
円柱状の植物の茎の表皮組織は、内部組織拡張による機械刺激にさらされ、荷重耐性を発揮することで内部組織の伸長を制限している。 植物の成長と機械刺激の発生は表裏一体であり、近年この細胞成長と機械刺激の受容・伝達のフィードバック機構が植物の形態形成に重要な役割を果たすことが示されてきている。 本研究では、モデル植物であるシロイヌナズナを用いて、機械的ストレスの程度が異なることが予想される茎の組織毎に網羅的な遺伝子発現解析を行なうことで、茎の形態形成と機械的整合性維持機構の制御を司る遺伝子発現基盤を明らかにすることを目的としている。本研究ではシロイヌナズナ野生型系統に加えて、茎に亀裂が生じる変異体系統を用いる。茎に生じる亀裂というのは、茎器官における力学的な整合性が破綻したための現象で、植物の成長が器官の破綻を引き起こすほどの力の発生を伴うことを体現している例といえる。 茎の組織ごとの遺伝子発現解析にはShi et al., (The Plant Cell, 2021)を参考に、茎の各組織(表皮、内皮、維管束など)に特異的に発現する遺伝子のプロモーター制御下でH4-GFPを発現する系統を作製し、GFP蛍光を指標とした核ソーティングによって細胞分画を行い、それらから作製したRNAライブラリに関してRNA-seqを行なうことを計画している。本年度は野生型背景の各H4-GFP系統と茎に亀裂が生じる系統との交配、目的系統の選抜が途中まで完了した。またRNAライブラリ作製に向けた、実験環境の整備をすすめることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では数十のシロイヌナズナの新規形質転換系統の作製を予定している。計画当初から支援期間の前半は系統の作製、後半は実際の解析と想定していたため、2021年度はそれらの作製を順次すすめることがメインの課題であった。薬剤による選抜と蛍光観察による選抜を組み合わせて選抜をすすめ、現時点でおおよそ系統確立の見込みがついたことから、計画は順調に進んでいるといえる。一方で、形質転換系統作製の際には頻出の問題であるが、導入遺伝子発現のサイレンシングや導入遺伝子同士がゲノム上で近傍に位置することによる選抜の複雑化といった問題が生じたため、それらの対応のために想定した最短期間での系統の作製はできていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は基本的には研究計画通りに、形質転換系統の作製の残りを引き続きすすめるとともに、また蛍光核ソーティングを行なうための実験の準備、RNA-seq解析をすすめる上での環境整備に取り組む。 一部、まだ選抜途中の系統の中で、同じ遺伝子コンストラクトを導入していても、野生型では意図した組織に蛍光が発現している一方で、茎に亀裂が生じる系統背景では意図した組織以外で蛍光を示す系統がみられている。それらに関してはより詳細な発現組織、細胞の特定をすすめ、形態変化による細胞のアイデンティティが変化している可能性を視野にいれて、実際にRNA-seqの解析対象とするかも含めるか検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入予定であったサーマルサイクラーが共用機器として別予算での購入となったため。遺伝子発現解析環境の整備のために次年度使用する計画である。
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