研究課題であるCas13dとTetOnシステムを組み合わせた系を確立するため、まずヒートショックプロモーターの下流でrtTAタンパクを発現するトランスジェニック(Tg)カエル(の作製に取り組んだ。この際、CRISPR-Cas9を用いて、ゲノムターゲティングを基とした新規Tgアフリカツメガエルの作製法を開発した。この手法では、tgfbr2l.Lの部分配列が組み込まれたベクターと、同遺伝子に設計したsgRNAおよびCas9 タンパク質を受精卵に導入することで、高効率で特定の領域に標的DNAを組み込んだTgを簡便に作製できる。本手法の開発にあたり、各Fin and gill keratin (FGK)、Crysterin、CMV、およびSox2 promoterの下流にGFPやtdTomatoを組み込み、組織特異的に蛍光タンパ ク質が発現することを確認した。さらに、組み込まれた外来遺伝子が次世代に継承し、安定的な組織特異的蛍光シグナルを呈する生殖細胞系伝達を確認した。これらの結果は、tgfbr2lの領域がアフリカツメガエルのセーフハーバー領域であることを示唆している。本手法は広くTg作製に用いられているREMI法やI-SceI法に加え、第3のTg作製オプションとなることが期待され、NEXTrans法と命名し、Developmental Biology誌に報告した。 次にCas13dを用いたmRNAのノックダウン(KD)が両生類でも機能することを確認するため、pax6遺伝子を標的としたガイドRNAを設計し、Cas13d mRNAとともに受精卵に導入した。その結果、野生型と比較して小さい眼を持つ個体の作出に成功した。本結果はCas13dによるmRNA KDが、両生類でも有効な手法である可能性を示唆しているが、他の生物種と比較してその効率が低いため、更なる条件検討が必要と考えられる。
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