造血幹細胞は、造血系階層の頂点に位置する細胞で、自己複製能と多分化能を有し、血液細胞を供給し続ける。しかし、造血幹細胞がどのようにその機構を維持しているかは、ほとんど明らかとなっていない。私達の研究グループは、Hoxb5発現を識別可能なレポーターマウスを作製し、造血幹細胞の自己複製能について機能解析を行ってきた。造血幹細胞分画の中でも、Hoxb5陽性分画に、長期的に自己複製能が維持される長期造血幹細胞が高純度に濃縮される。 そこで、本研究では、長期造血幹細胞であるHoxb5陽性造血幹細胞に特異的に発現している遺伝子群を対象として造血幹細胞における機能解析を行うことで、自己複製能を制御する遺伝子を同定することを目指した。初めに、オミクス解析の結果から、長期造血幹細胞で高く発現している遺伝子群を抽出している。続いて、独自開発したin vitroスクリーニングの評価系を用いて、造血幹細胞における上記遺伝子の機能解析を実施した。造血幹細胞に候補遺伝子を遺伝子導入することで、その細胞機能の変化を解析した。その結果、一部の遺伝子を造血幹細胞に遺伝子導入した場合のみ、未分化細胞分画であるLKS分画の割合が増加することやコロニーの形成能が緩やかであることを明らかとし、造血幹細胞の細胞機能に変化をもたらす可能性を明らかとした。さらに、選定された遺伝子を対象に、二次スクリーニングとして、造血幹細胞に遺伝子導入し骨髄移植実験を行った。骨髄移植実験の結果から、自己複製能の制御に関与する可能性の高い遺伝子を同定した。引き続き研究を継続し、今後、同遺伝子の機能解明を目指す。
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