研究課題/領域番号 |
21K20670
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研究機関 | 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構 |
研究代表者 |
森 真弓 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構, その他部局等, 特任主任研究員 (70710060)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | がん免疫 / 免疫老化 / 代謝 |
研究実績の概要 |
加齢・老化に伴い個体や細胞の代謝に様々な変化が起きると、T細胞の数や機能等が減弱してしまう結果、高齢になるほど癌細胞を除去しきれずに癌が発生する確率が高くなると考えられる。本研究では、癌を標的とした免疫細胞における代謝経路の老化因子・抗老化因子を同定し、T細胞免疫による癌除去機能に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。 実験1: T細胞を用いた実験系における老化指標の決定...野生型マウス脾臓細胞または単離T細胞の表面受容体を刺激して活性化した。同時に代謝関連薬剤で処理し、T細胞の増殖や活性・生存率を計測した。また、高齢マウスと若齢マウスの結果を比較した。その結果、高齢マウス由来のT細胞および代謝阻害したT細胞で、細胞の活性化や増殖が顕著に低下した。これに加え、T細胞表面のPD1やCD153などを老化指標とした。 実験2: 抗原特異的なT細胞活性における代謝経路の影響...OT-IまたはOT-II TCRトランスジェニックマウス脾臓からT細胞を単離し、各々のTCR特異抗原ペプチド等を用いて刺激した。同時に代謝関連薬剤で処理し、老化指標を比較した。その結果、様々な薬物により異なる結果が得られた。各代謝経路による影響はこの実験だけでは結論できないが、まずビタミンDに着目した。 実験3: 癌抗原特異的なT細胞免疫に対する代謝経路の評価...(1)マウス癌細胞株EL4に特異抗原を発現させたEG7をLy5.1(CD45.1+)マウスに皮下移植した。同時にOT-I TCRトランスジェニックマウス由来のT細胞を尾静注して癌を認識させた。癌細胞除去効果を、ビタミンD過量投与の有無で比較した。移植癌細胞の増殖とその抑制を、腫瘍体積や癌組織浸潤免疫細胞数を基準として評価した。(2)尾静注するT細胞に予めビタミンD処理したものとしていないものでの比較も行った。これらの実験結果は現在解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究遂行に必要な動物や試薬、機器が年度初めからある程度そろっていたため、計画通りに進捗した。
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今後の研究の推進方策 |
研究室移転のために、次年度初めは進捗の遅れが見込まれる。また、動物の施設間移動も凍結胚の作製から始めるためタイムロスとなる。そこで、研究機関を兼任して、一部の動物は施設を移動しないまま、その実験を半年程度で終了させる予定である。凍結胚による動物移動が完了後、年度の後半部分で、追加で必要な動物実験を移転後の研究施設にて行う。回収サンプルのうち RNA や DNA などは保存および移動が簡単にできるため、動物実験の場所によらず本務先または最も便の良い施設にて解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は、研究に必要な動物・機器・設備・試薬などがあらかじめ研究室内で入手可能なものが多く、費用が抑えられた。しかし、次年度は研究室移転により、セットアップにともない新たに費用がかかることを見越し、必要な機器が購入できるように次年度使用額として設定した。
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