本研究では、癌を標的とした免疫細胞における老化因子または抗老化因子を同定し、特にT細胞免疫による癌除去機能に関与する細胞代謝因子の影響を明らかにすることを目標とした。 まず初年度には、抗原特異的なT細胞活性における代謝経路の影響を調べるため、OT-IまたはOT-II TCRトランスジェニックマウス脾臓からT細胞を単離し、各々のTCR特異抗原ペプチド等を用いて刺激した。同時に代謝関連薬剤で処理し、PD1やCD153などの老化指標を比較した。その結果、様々な代謝経路に関わる重要な因子として、まずビタミンDに着目した。 その後はOT-I TCRを持つCD8T細胞に着目してさらに解析することにした。ビタミンDによって、T細胞の生存率や抗原反応と活性化、老化マーカーや細胞増がどう変化するかをフローサイトメトリーにより解析した。またさらに、このT細胞からRNAを抽出し、QPCRによって老化と関わる細胞周期調節因子などの発現を定量的に調べた。 一方、マウス生体実験では、癌抗原特異的なT細胞免疫に対するビタミンDの影響を評価するため、特異抗原を発現するマウス癌細胞株EG7をLy5.1(CD45.1+)マウスに皮下移植し、同時にOT-I T細胞を尾静注して癌を認識させた。培養中のEG7癌細胞の増殖や生存はビタミンDにより直接影響を受けることがわかったため、癌移植マウスにビタミン投与する代わりに、OT-I T細胞をトランスジェニックマウスから単離して培養中にビタミンD処理したものとしていないもので比較解析した。移植癌細胞の増殖とその抑制を、腫瘍体積や重量、癌組織に浸潤したOT-I T細胞数を基準として評価した。 最終年度はこの移植実験を繰り返し、ビタミンDを与えたT細胞がそうでない細胞と同等かそれ以上に癌を縮小させる再現性を確認した。
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