近年、地球温暖化、気候変動に伴う異常気象イベントの強度や頻度の増加、人間活動に伴う人為的なストレスの増加によって、複数の異なる種類、異なるタイプの攪乱が同時に作用する多重攪乱が世界的に増加している。多重攪乱による生態学的インパクトや帰結の予測の難しさは、攪乱間の相互作用によりその影響が相加的でなく、相乗的、相殺的になる可能性があることにある。しかし攪乱間の相互作用がどのような条件でどう変化するについての理解は進んでいない。本研究は様々な攪乱の中でも海洋において特に起こりやすい人為的なストレス、慢性的な高温ストレス、極端な高温イベントの多重攪乱が沿岸生態系にどう複合的に影響するかを評価することを目的とした。当初は、水質や温度を野外で操作する実験を実施する予定だったが、野外では水温と水質の安定的な操作が困難であることが分かった。そこで、計画を変更し、野外の水質や温度条件が異なる地点間で高温イベントのインパクトを定量比較することとした。そのために、三陸沿岸で温度履歴、水質と魚類の群集構造の調査を行った。現在までに水質ベースで調査地点を選定し、基準値となる高温イベントがない状態での魚類群集データを得た。この研究は今後も継続し、当初の研究目的を達成する予定である。本研究の成果は、この多重攪乱の相互作用がどのような種類どのような時間的特徴を持つ攪乱間でどう変化するかを明らかにするものであり、世界中で起こる様々な多重攪乱の予測可能性の向上に大きく貢献することが期待される。
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