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1細胞レベルの成長動態と多数の細胞集団の動態を接続する理論的な枠組みの構築を目指し、変動環境下における集団動態と1細胞レベルの世代時間ゆらぎの関係性を明らかにする研究を進めてきた。前年度までは、(1) 有限集団の定常データに適用可能な既存の手法の妥当性及び限界を確認するための数値シミュレーションと実験データにへの適用、(2) 定常性の低い細胞系譜データの解析、(3) 細胞の排除や死亡を含む個体群動態において細胞の定量的形質の違いによる選択がどの程度起きるのかを定量的に評価する方法の考案と本手法の実験データへ適用可能性の評価を行った。
本年度は前年度までに得られた成果報告を学会や研究会にて積極的に行い、(3)については共著論文として出版した。加えて、変動環境下における増殖する細胞集団の実験データを取得するためのマイクロ流体デバイスの作製しテスト計測を行うと共に関連する以下の共同研究を進めた。1つ目は環境変動による細胞状態の変化を非侵襲的に測定するラマン顕微鏡技術とオミクス情報の関係の数理的背景について明らかにすることであり、投稿準備を進めると共に学会発表を行った。将来的には細胞系譜解析と組み合わせることでより深く細胞状態のゆらぎと成長動態の関係を探究することが期待される。2つ目はLacZタンパク質のタンパク質分解に対する安定性に関する研究であり、研究代表者が実験データの解析を担当した共著論文が受理された。この研究で作成された細胞株ライブラリーは環境変動下での集団動態測定実験でも使用することが期待される。
このように、当初の目標は未達成ではあるものの研究期間全体を通してデータ解析技術と実験の準備状況には一定の進展が見られた上、当初想定していなかった関連の深い共同研究のへの展開も行うことができた。
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