研究課題/領域番号 |
21K20678
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研究機関 | 北九州市立自然史・歴史博物館 |
研究代表者 |
江頭 幸士郎 北九州市立自然史・歴史博物館, 自然史課, 学芸員 (10738826)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2025-03-31
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キーワード | 島嶼生物学 / 分子系統学 / 生物多様性 / 種分化 / 固有種 / 両生類 / 氷期間氷期サイクル |
研究実績の概要 |
2023年度は、当該研究課題に関わる実績として論文一件の執筆・出版、学会発表二件を行った。加えて別の論文一件の執筆を行ったが、年度内に原稿完成に至らなかったため、投稿は2024年度まで持ち越すこととする。 当該研究課題は、島嶼と本土陸塊との接続・分断の繰り返しが、両生類の多様性に与える影響と、そのメカニズムとを解明し、生物多様性創出機構の一端を理解することを目指す。2023年度に出版した論文は、九州島とその島嶼部の両生類の種構成や遺伝的変異を調査する中で見出された島嶼産固有種の新種記載、およびその種分化シナリオの仮説を提示するものであり、研究目的のうち特に「両生類の多様性に与える影響」を評価するのに資する成果である。この研究で、島嶼の分断により固有種が誕生したこと、続く接続で本土に広域分布する姉妹種が島嶼域に流入したものの共存し、再度の島嶼分断後は島単位で各種の絶滅が生じたと見えるもののモザイク状に分布する形で両種が同じ島嶼域に共存し続けているという、種多様性創出プロセスを提示できた。またこの論文中で、関連する既知の島嶼産亜種についても再評価も行っており、九州とその周辺島嶼の両生類の種多様性をできるだけ統一的な基準で評価する土台を整えることができた。学会発表二件については、いずれも昨年度および今年度出版した論文の内容に関するもので、その成果の普及に努めた。現在執筆中の論文はもう一つの目的、「メカニズムの解明」に迫るものであり、2023年度までに得られた次世代シーケンシングの解析結果も含めた形で、2024年度中の公表を目指し執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度に引き続き2023年度も各論的論文を出版できたが、当該研究課題の成果を総括する総論的な内容の論文については、データ解析が完了していなかったこともあり執筆が完了していない。
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今後の研究の推進方策 |
データ解析については2023年度中に概ね完了できたので、延長最終年度にあたる2024年度中に論文の出版を目指し執筆を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に成果公表費として確保していた予算のうち、学会発表に係る費用は執行したが、論文掲載料に係る予算は、当該年度中に出版できなかった論文が一件あったため執行しきれず、翌年度に持ち越すこととした。
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