研究課題/領域番号 |
21K20691
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田口 智之 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (00909393)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / 伝播 / 神経炎症 / 末梢 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はパーキンソン病(PD)における病的なα-シヌクレイン(α-syn)進展経路の新たな探索である。現在PD の発症・進展様式として、腸管にて出現した凝集α-synが迷走神経を介して、神経細胞間を伝播していき中枢神経を上行していくという仮説が主流となっている。しかしPD 剖検脳の検討から、全てのPD が上記仮説の通りに拡がるわけではない。以上から神経系を介さない進展経路も存在する可能性がる。そこで、本研究ではα-syn の新たな進展経路として末梢免疫細胞の関与について検討する。 具体的には野生型もしくは申請者が作製した前駆期PD モデルマウス用いて、人工的に作製した凝集α-syn(PFF)を取り込んだ末梢免疫細胞を移植することにより、PD 病態に末梢免疫細胞がどのように関与しているのかα-syn 病理学的進展を中心に検討した。 Ex vivoにて末梢血単核細胞(PBMC)もしくは骨髄細胞は、PFFを効率よく貪食することを確かめた。またEGFPマウスのPBMC及び骨髄細胞にPFFを貪食させたものを尾静脈より移植したが、脳内への侵入は確認できなかった。そこで予めLPSにて前処理した野生型マウスもしくは前駆期PD モデルマウスの尾静脈よりPFF含有PBMC及び骨髄細胞に移植すると、脳内に侵入することが確認できた。脳内に侵入した末梢免疫細胞系が、貪食したPFFを放出することによりα-syn病理の進展(伝播)が起こる可能性について移植3ヶ月後の評価を行った。野生型マウスに移植を行った実験では、脳内のa-syn病理の進展は確認できなかった。 またPFFは、作製する条件で伝播能力や神経毒性に大きく影響することがわかっている。そこでより伝播能力が高いPFFを作製し、今後は伝播能力が高いPFFを使用し、実験を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
LPS投与下において、脳内にPFFを含有したPBMCや骨髄細胞の存在を早期の段階では確認できるが、長期の段階においては、野生型マウスを使用したものではα-syn病理の進展は認められなかった。現在前駆期PDモデルマウスにおける長期段階のα-syn病理進展の有無を確認中である。また伝播能力が高いPFFを使用して、再度野生型及び前駆期PDモデルマウスの長期段階におけるα-syn病理の進展を確認する必要がある。病理の進展なしにて安易にその先の実験を進めることは困難である。また研究代表者の生活環境の変化(育児)や新たな実験プロジェクトの推進の影響もあり計画は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
伝播能力の高いPFFを使用し、野生型及び前駆期PDモデルマウスの長期段階のα-syn病理進展の確認の有無を行う。進展の確認ができれば、採取した血漿などのサンプルについて炎症性サイトカインや走化因子を評価し、病理進展に関与する液性因子の同定を試みる。病理進展が確認できなければ末梢免疫細胞系のPBMCや骨髄細胞は、脳内に存在するミクログリアと違いPFFの処理能力が高い可能性があることが予想される。よって末梢免疫細胞系のPFF処理能力の検討をex vivoにて検証する。末梢免疫細胞系はPFF伝播に対して抑制的に働く可能性も考えられ、末梢免疫細胞系を賦活する刺激を与え(TLRの刺激や免疫抑制性シグナルのブロック)治療応用を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
長期的な病理の悪化について確認することができず、それにより末梢や脳内の炎症性サイトカインやケモカインを測定することができなかった。また研究責任者の生活環境の変化(育児)や新たな研究プロジェクトより、本研究に対するエフォートの割合が低下し、実験速度が低下したことにて次年度への使用額が生じた。使用計画としては研究計画で予定していたサイトカイン、ケモカインを網羅的に解析する予定である。
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