研究課題
脳微小血管の壁細胞ペリサイトは、脳梗塞後の梗塞内部ではマクロファージの動員を誘導して壊死組織の処理に関わり、梗塞周囲領域ではアストロサイトに作用してオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)の分化/再髄鞘化を促進させ、内因性機能回復を誘導する。細胞外マトリックス (ECM) 蛋白質は、脳梗塞による傷害を受けてから再構築されることで、これらの細胞周囲の微小環境を制御し、的確に作動するために必要不可欠である。本研究では、脳梗塞後の機能回復に関わるECMに注目し、①ペリサイト由来のECMによるマクロファージの壊死組織処理制御、および②アストロサイト由来のECMによるOPCの分化/再髄鞘化制御について検討した。その結果、①ペリサイトは梗塞内部でFibronectinを産生し、Fibronectinは培養マクロファージと接着し貪食能を促進した。また、②アストロサイトは梗塞/健常部分の境界でLaminin α2を産生し、培養ペリサイトはTGFβ1を介して培養アストロサイトのLaminin α2産生を促進した。さらにLaminin α2はOPCの再髄鞘化を促進した。ペリサイト機能が減弱したPDGFR βヘテロノックアウトマウスでは、梗塞内部に蓄積するFibronectinが減少し、マクロファージによる壊死組織処理が抑制された。さらに梗塞/健常部分の境界で発現するLaminin α2が減少し、梗塞周囲領域におけるOPCの分化/再髄鞘化が抑制され、これに一致して脳梗塞後の神経機能回復が減弱した。以上より、我々は脳梗塞後に再構築されたECMが、内因性機能回復を誘導する機序の一端を担うことを明らかにした(Shibahara T et al. J Cereb Blood Flow Metab 2023)。本研究成果はECMをターゲットとした新規治療法開発の基盤となることが期待される。
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Journal of Cerebral Blood Flow & Metabolism
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