研究課題/領域番号 |
21K20696
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
谷口 大祐 順天堂大学, 医学部, 特任助手 (70908946)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 大脳皮質基底核変性症 / タウ蛋白 / アストロサイト / 伝播 / マウスモデル / タウオパチー |
研究実績の概要 |
大脳皮質基底核変性症(CBD)では疾患特異的な立体構造をもったタウ凝集体(CBD型タウ)が形成されている.今年度は,神経細胞系培養細胞を用いて増幅したCBD型タウを人工シードとしてマウスに注入し,伝播が起こるかを確認した.まず,人工シードを安定して増幅する方法を確立し,伝播に必要なシード量を得た.さらに,得られたシードがCBD型タウの立体構造を持つことを確認した.人工シード注入6か月後のマウスでは神経細胞体と軸索を中心にタウ病理を認め,伝播を確認できたが,CBDに特異的なアストロサイトのタウ凝集体は認めなかった.患者脳から抽出したタウシードではアストロサイトのタウ病理が再現できていることから,培養細胞の実験系ではアストロサイト内にタウ凝集を引き起こすための因子がないことが推測された.研究代表者は,この因子がアストロサイトの細胞内環境に起因していると予想し,①マウスモデルを用いてタウが凝集したアストロサイトの空間トランスクリプト―ム解析を行う,②アストロサイト培養細胞を用いた人工シードを作製し,マウスモデルでアストロサイトのタウ病理を再現できるかを確認する,という二つの方針を立てた.①の予備実験として,アルツハイマー病モデルマウスで条件検討を行い,解析が可能であることを確認した.②では,アストロサイトには内在性のタウ蛋白の発現がほとんどなく,通常の試薬では遺伝子導入ができないことから,AAVベクターを用いてタウ蛋白を発現させてシードを増幅する.今後は,CBDのアストロサイトのタウ凝集体を引き起こす因子の同定,ひいてはCBD型タウの形成を関与する因子の同定を目指す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
培養細胞を用いて増幅した人工細胞シードをマウスに注入し伝播を確認できたが,CBDのアストロサイト病理を再現できなかった.そのため,アストロサイト培養細胞を用いた人工細胞シードを作製する方針としたが,AAVベクターの作成など実験系の構築に時間を要している.
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今後の研究の推進方策 |
アストロサイト培養細胞を用いた人工細胞シードをマウスに注入し,CBD病理の再現を目指す.また,空間トランスクリプトーム解析にてCBD型タウの形成に関与する因子の同定を目指す,CBD型タウの形成に関与する因子の同定後は,培養細胞系を用いて発現量の操作や化合物スクリーニングを行い,ドラッグスクリーニング系の構築を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた方法でCBDモデルマウスを作成できなかったことから,その後使用する予定だった試薬・マウスの購入を延期した.今年度は新たな条件でCBDモデルマウスを作成するため,繰り越したものは今年度使用する予定が立っている.
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