研究課題
先進的MRIを主眼としたパーキンソン病レジストリとして、先進的MRI、採血(遺伝子、血清、血漿)、心理検査、パーキンソン病に関連する各種スコア、自律神経機能・嗅覚検査などを中心とした経年評価を順天堂医院にて2019年より開始した。現在、脳神経内科医、心理士、検査技師、入力スタッフによる評価フローが確立してきており、週7-10名のペースで登録を継続できている。登録に当たっては進行期まで網羅できるよう入院患者からもリクルートを行っている。2021年11月までにのべ777件の登録を得ることができた。このうち133名はすでに2年目以降のデータを得られており、縦断的データとしても完成しつつある。これにより得られたデータを用いて、昨年度は衝動制御障害を有するパーキンソン病患者における先進的MRIの研究を行った。パーキンソン病患者で変化を認める特定の白質微小構造において、衝動制御障害を有する患者では有意に変化が抑制されることを見いだし、この結果をAnnals of Clinical and Translational Neurology誌(2022 Mar)に発表した。衝動制御障害のリスク因子の一つとしてドパミンアゴニストの使用が知られているが、特定の白質微小構造が保たれている患者に対してドパミンアゴニストを中心とした治療を行うことで、より衝動制御障害が誘発されやすいことも予想され、テーラーメイド医療にもつながる成果と考えられる。また、MAOB阻害薬内服の有無による白質微小構造変化についても解析を行い、新規の知見を得られており、2022年度中に論文化する方針である。さらに2021年度より、タブレット端末からの入力機能、得られたデータのデータベース化に対しても取り組んでおり、2022年度中の完成を目指している。
2: おおむね順調に進展している
レジストリ登録患者数は順調に増加しており、データベース化についても順調に調整が進行している。またこれに基づく論文も英文誌に掲載され、学術的成果もあげられている。
MAOB阻害薬と白質微小構造の関係についてdouble cohortで解析を行い、新規の知見が得られており、2022年度中に投稿予定である。パーキンソン病レジストリについては心理検査を担当するスタッフを新たに雇用し、心理検査枠を拡充してさらに登録者数を増やしていく。すでに登録している患者については、2回目以降のデータが得られつつあるため、認知機能、抗パーキンソン病薬の必要量など、経時的な変化について先進的MRI画像や血液データを統合して解析を行い論文化する。
2021年度は関連病院への派遣があり、研究環境、研究に充てられる時間に限りがあり次年度使用額が生じた。2022年度は新たに雇用した心理士の人件費、消耗品等の経費、学会・論文発表費用などに充てる方針である。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件)
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