哺乳類の大脳皮質の形成には、時空間的に制御された神経幹細胞の増殖と、その後のニューロン産生が重要である。全ての真核細胞のホメオスタシス維持に必須な分子であるプリンはDNAやRNA、ATP/GTPの原料である。プリンは脳の正常な発達に必須であり、その代謝異常は先天性てんかんや精神遅滞、レッシュナイハン症候群などの重篤な疾患を引き起こす。哺乳類は新生(de novo)経路と再利用(salvage)経路の2種類のプリン産生経路を持ち、通常時はエネルギーコストの低いsalvage経路が使用されるが、細胞分裂など多量に核酸を必要とする際は、de novo経路が駆動することが分かっている。更に、近年、de novo経路の6種類の酵素が巨大タンパク質複合体であるプリノソームを形成することで酵素反応を行なっていることが明らかになった。我々が神経幹細胞から新規同定したNwd1遺伝子はプリノソームの形成に関与することで神経幹細胞の増殖・分化を制御することが示唆されている。しかし、①脳の発達におけるプリン合成経路の時空間的な使い分け、②生体内でのNwd1の機能に関しては未だ不明であった。本研究では、①各種プリン阻害剤投与マウスの表現系を解剖学・組織学的な解析及び生化学的な解析を行い、脳の発生段階における時間的な使い分けおよび、組織内における空間的な使い分けが明らかになった。さらに②Nwd1ノックアウトマウスを作製し、その表現系を解剖学・組織学的及び生化学的な解析を行った。
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