研究課題
光を用いた新たながん治療法である光免疫療法(Photoimmunotherapy; PIT)は、がん細胞の免疫原性細胞死を誘発するため、抗腫瘍免疫応答を効率的に活性化する。申請者はこれまでに、免疫チェックポイント阻害剤を投与したマウスに、高い光照射量でPITを行うと全身性の副作用が生じることを見出した。これには免疫・炎症応答の関与が想定されるが、PITが起点となった生体内の反応がどう推移して副作用に至るかは明らかとなっていない。そこで本研究では、同一個体を経時的に解析できる生体イメージングを用いて免疫・炎症反応の推移を明らかにすることを目的とする。同時に、血液検査値や臓器障害などを総合的に分析することで副作用の病態に迫る。初年度はまず、PITを行った担癌マウスの血中の炎症性サイトカイン濃度および電解質濃度に関する検討を行った。マウス由来MC38細胞を移植したC57BL/6JマウスおよびBALC/c nu-nuマウスに移植して担癌マウスを作製した。それぞれの腫瘍にPITを行い、血中のTNF-αおよびIL-6の濃度を測定したところ、ヌードマウスと比較して免疫系が保たれているC57BL/6Jマウスで炎症性サイトカインが大きく上昇した。したがって、炎症性サイトカイン産生や電解質の変動には、PITによって誘発される宿主の免疫応答が関与していることが示唆された。続いて2年目には、PITによって生じる炎症・免疫応答を、糖代謝イメージング剤[18F]FDGを用いたPETイメージングによって解析した。その結果、ヌードマウスではPIT後に[18F]FDG集積が大きく低下したのに対し、C57BL/6JマウスではPITによって[18F]FDG集積が変化しなかった。C57BL/6Jマウスでは、腫瘍内やその近傍に存在する炎症細胞や免疫細胞が[18F]FDG集積に関与している可能性が考えられる。
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