研究課題/領域番号 |
21K20711
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
浅見 裕太郎 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, プロジェクト助教 (70911858)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | siRNA / Blood brain barrier / oligonucleotide / 2'-O-methyl RNA / DNA / RNA interference |
研究実績の概要 |
本研究では、全身投与で血液脳関門を越えて脳のRNAを抑制できる血液脳関門通過型DNA/DNA-siRNAの創出を目指している。そのためにin vivoでsiRNAが安定して存在する必要があるが、siRNAはRNAから成りin vivo血中ではごく短時間で分解されてしまう。そこで血中で安定なDNAと2’-O-methyl RNAを交互に配置したMED-siRNAを用いた。siRNAはRNA以外の核酸種を使用するとその標的RNA抑制活性が低下することが知られていたが、MED-siRNAは低下がほとんどない利点がある。 MED-siRNAの構造を検討しつつ臓器送達効率を向上させることが知られているコレステロールをsense鎖の3’末端に結合した。これを、in vivoで最も評価しやすい肝臓で検討した。Chol-MED-siRNAをマウスに静脈注射すると、予想に反して肝臓での標的RNA抑制効果がほとんど認めなかった。原因として細胞内送達効率の低さが考えられたため、その向上に有用と考えられるホスホロチオエート結合(PS)をsense鎖に導入した。細胞系での実験でPS導入により標的RNA抑制効果がほぼ減弱しないことを確認したのち、マウスに静脈投与したところ肝臓へのデリバリーと標的RNA抑制効果を認めた。MED-siRNAのin vivoでの効果を証明したのは本研究が初めてである。 その後肝臓以外への臓器、特に脳に到達させるために、当研究室で脳への到達に成功しているヘテロ核酸の構造と比較し、文献も参考にすることで血液脳関門通過DNA/DNA-siRNAの候補構造を複数作成した。マウス全身投与後24時間でマウスの脳で抗PS抗体による免疫組織染色を行うと、候補のほとんどで脳内毛細血管や脈絡叢に核酸が届いていることが分かった。さらにいくつかの構造では脳実質細胞にも届いている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記のように、当初の実験計画で予定していた、血中で安定なsiRNAを作成することは既に達成済みである。また、次の目的であった、全身投与でマウス肝臓に到達し標的遺伝子を抑制するsiRNAの作成にも成功した。 さらに最終目標である脳を標的にした血液脳関門通過DNA/DNA-siRNAの候補品をすでに複数種類マウスに投与し脳デリバリーを評価し、その結果からさらに到達量の多い候補品を作成する段階に至っている。この段階にはR4半ば以降に到達する目標であったことから、当初の計画以上に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、マウス肝臓へのデリバリーと標的RNA抑制効果の結果を元に作成した血液脳関門通過DNA/DNA-siRNAの候補構造のほとんどで脳内毛細血管や脈絡叢に核酸が届いていることが分かっており、さらにいくつかの構造では脳実質細胞にも届いている可能性が示唆されている。しかし真に脳に到達しているかは慎重な判断が必要であるため、異なる実験手法も含めた再現実験を行い確定する方針である。また脳内到達量はまだ十分とは言えず、さらに到達量を増やすことを目標にしている。これまで検討した候補構造と脳到達の関連性から、脳に届きやすい構造の仮説をいくつか得ており、その仮説の検証を行い、脳到達に重要なsiRNAの化学構造を明らかにしたい。その結果を応用して脳に多く到達し標的RNAを効率的に抑制できる血液脳関門通過DNA/DNA-siRNAを完成させることを目標にしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の発注で続きが事務担当者の手違いで行われておらず、判明した時点では年度内の納品が不可能になっていたため当該の差引額が生じた。 発注予定であった試薬は令和4年度にも使用予定であるため、改めて発注し研究を推進する。
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備考 |
2021年度卒業の修士課程大学院生の卒業論文課題として提出、発表し学位を授与された。
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