研究課題/領域番号 |
21K20715
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
有地 法人 京都大学, 薬学研究科, 助教 (60904935)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 可視光レドックス触媒 / アルカロイド / 全合成 / ラジカル |
研究実績の概要 |
Hetisine型アルカロイドは強力な生物活性とsp3炭素に富む特異な縮環構造を持つことから、医薬シードとしてのポテンシャルを秘めている。本研究では、可視光レドックス触媒を用いた脱炭酸型[3+2]環化付加を新規に開発し、hetisine型アルカロイドの効率的な全合成を実現することで、創薬展開の礎とすることを目的とする。本年度は以下に示すように、モデル基質の合成と[3+2]環化付加の条件検討を行った。
市販の3-メチル-2-シクロヘキセノンから3工程で、モデル基質であるアミノ酸を合成した。モデル基質が持つアミノ基をパラホルムアルデヒドとの縮合により、イミニウムへ変換した。続いて可視光レドックス触媒を用いて、基質のカルボキシ基からアルキルラジカルを発生させ、その分子内連続環化による形式的[3+2]環化付加を検討した。生成物を精査したところ、目的物ではなく、オキサゾリジノンが得られていることがわかった。この原因は、脱炭酸によって望みのアルキルラジカルが発生する前に、カルボキシ基がイミニウムへ求核攻撃することで、5-endo-trig型の分子内環化が進行したためであると考えられる。
副反応を防ぐため、カルボン酸ではなく、トリフルオロボレートからアルキルラジカルを発生させることを検討した。トリフルオロボレートは、酸素や水に対して安定で取り扱いやすい化合物として知られており、鈴木カップリングや可視光レドックス触媒反応への利用例も多く報告されている。既知反応を利用することで、トリフルオロボレートとアミノ基を有する新たな基質を合成した。この基質を用いて[3+2]環化付加を検討したところ、粗生生物のLC/MS分析で目的物に相当するピークを検出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に設計したモデル基質では、望まぬ環化反応が問題となることが明らかになったが、この副反応を防ぐための新たな基質の設計と合成に成功した。この基質を用いて反応条件の初期検討を行ったところ、目的物の生成をLC/MS分析で確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
新たに設計した基質を用いて、光触媒、添加剤、溶媒等のスクリーニングを引き続き進める。目的物を得るための最適反応条件を決定した後、hetisine型アルカロイドの全合成への応用のため、より酸化度の高い基質を合成する。この基質に対して最適反応条件を適応し、基本骨格の構築を行う。残る環の構築と官能基変換を経て、kobusineの全合成を目指す。
具体的には、市販品から5工程で不斉合成できるアルデヒドと、ボロン酸エステルを有するアミンとの縮合により、イミンを生成させる。このイミンのPictet-Spengler反応による分子内環化と、ホウ素官能基のトリフルオロボレートへの変換を経て、[3+2]環化付加の基質を合成する。モデル基質を用いた検討で見出した最適条件を適用して鍵反応を実施した後、Birch還元によりアニソール部位をシクロヘキサノンへと変換する。この六員環を足場として、[4+2]型の環化付加によりビシクロ[2.2.2]オクタン骨格を形成した後、官能基変換を経てkobusineへと導く。
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