研究課題/領域番号 |
21K20718
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
民谷 繁幸 大阪大学, 微生物病研究所, 特任研究員(常勤) (90908203)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | Mycoplasma pneumoniae / 肺炎 / CARDS toxin / ワクチン |
研究実績の概要 |
本申請研究では、肺炎の主たる原因菌の1つであるMycoplasma pneumoniae(マイコプラズマ)の炎症惹起機序の解明を図るとともに、新規ワクチン開発を目的としている。これまでにマイコプラズマ由来外毒素であるCARDS toxinが、炎症因子として肺炎を誘発するのみならず、接着因子として、マイコプラズマの上皮細胞への接着にも寄与する可能性を先駆けて見出している。そこで初年度は、(1)CARDS toxinの炎症惹起メカニズムの解明、(2)CARDS toxinの新規ワクチン抗原としての有用性評価、を遂行した。組換えCARDS toxin蛋白質を経肺投与することで惹起される炎症がIL-1alphaに対する抗体投与で有意に抑制されるとともに、好中球浸潤に寄与するケモカインCXCL1の減少が観察された。また、CARDS toxinがマイコプラズマ表面にも存在すると共に、それらCARDS toxinが上皮細胞への接着にも寄与する、接着因子として機能することを見出した。さらに、CARDS toxinとアジュバントであるc-di-GMPを共にマウスの鼻腔に投与し、その後マイコプラズマを感染させたところ、肺胞洗浄液中において、好中球数が減少するのみならず、菌量の有意な減少も観察された。これらの結果は、CARDS toxinが感染・炎症誘発の双方を抑制可能な新規ワクチン抗原として有用であることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
過去に、組換えCARDS toxin蛋白質が上皮細胞上に存在するアネキシンA2やサーファクタントAなどの因子に接着することが報告されている。マイコプラズマ表面のCARDS toxinが接着因子として機能することを鑑みると、マイコプラズマ表面のCARDS toxinがアネキシンA2やサーファクタントAなどを介して上皮細胞に接着する可能性が示唆される。そこで、次年度は、CARDS toxinがマイコプラズマ表面上でどのように接着に寄与するのかに着目し、抗アネキシンA2抗体や抗サーファクタントA抗体を用い、マイコプラズマと上皮細胞の接着が阻害されるのかを評価する。 これまでに、マイコプラズマ由来P1蛋白質が上皮細胞への接着に寄与する一方で、P1蛋白質に依存しない接着、即ち、新規接着因子の存在が示唆されている。本申請研究の結果より、CARDS toxinが接着因子として寄与することは明らかとしたものの、マイコプラズマの上皮細胞への接着におけるCARDS toxin とP1蛋白質の相互作用については未だ不明である。そのため、抗CARDS toxin抗体および抗P1抗体を用いて、マイコプラズマと上皮細胞の接着が阻害されるのかを評価する。特に、マイコプラズマと上皮細胞の接着におけるCARDS toxin とP1蛋白質の寄与を経時的に解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究計画は概ね順調に遂行できていたものの、コロナ禍であることに加え、自身の所属が大阪大学から和歌山県立医科大学に移ったことにより、次年度使用額が生じるに至った。これらは次年度の研究遂行に使用する予定である。
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