本申請研究では、肺炎の主たる原因菌の1つであるMycoplasma pneumoniae(マイコプラズマ)の炎症惹起機序の解明を図るとともに、新規ワクチン開発を目的としている。これまでにマイコプラズマ由来外毒素であるCARDS toxinが、炎症因子として肺炎を誘発するのみならず、接着因子として、マイコプラズマの上皮細胞への接着にも寄与する可能性を先駆けて見出している。初年度は、(1)CARDS toxinの炎症惹起メカニズムの解明、(2)CARDS toxinの新規ワクチン抗原としての有用評価、を遂行した。そこで、今年度は、マイコプラズマの上皮細胞への接着にマイコプラズマ上に存在するCARDS toxinが寄与するのかを精査した。まず、過去の報告通り、マイコプラズマ表面にもCARDS toxinが存在することをフローサイトメーターを用いて確認した。また、マイコプラズマと上皮細胞であるA549細胞との接着が組換えCARDS toxin蛋白質の量依存的に抑制されたこと、組換えCARDS toxin蛋白質とA549細胞との結合がマイコプラズマ添加により抑制されたことから、マイコプラズマ表面に存在するCARDS toxinが上皮細胞への接着に寄与することを明らかとした。さらに、マイコプラズマ表面に存在するCARDS toxinは、既知の接着因子として知られるP1タンパク質とは異なり、感染初期の上皮細胞への接着には寄与しない一方で、感染後期において重要な役割を果たす可能性が示された。本研究を通し、マイコプラズマの感染および炎症惹起メカニズムの解明のために、CARDS toxinが極めて重要な因子であることが明らかとなった。また、CARDS toxinが感染・炎症誘発の双方を抑制可能な新規ワクチン抗原として有用であることも示している。
|