研究課題/領域番号 |
21K20724
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
高須 蒼生 岐阜薬科大学, 薬学部, 助教 (60908458)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 1-Deoxynojirimycin (DNJ) / アザ糖 / 体内動態 / LC-MS/MS / 桑葉 |
研究実績の概要 |
アザ糖は、桑葉に多く含まれる類似糖で、炭素環内などに窒素を有するという特徴を持つ。アザ糖は血糖上昇抑制を介した糖尿病予防作用や脂質代謝改善作用などが報告されている。これらの生理作用の一部は、アザ糖が生体内へと吸収されたのちに、その効果を発揮すると予想されている。アザ糖の血中の濃度推移が研究され、アザ糖が摂取後に速やかに体内へと吸収されることが明らかにされている。しかし、体内への吸収後の臓器分布や代謝には不明な点が多い。臓器への移行や代謝は、生体内での生理作用と大きく関係する。さらに、臓器分布の制御は、生理活性の向上にも有効であると考えられる。私は、これまでにアザ糖の輸送と糖輸送体の関係を見出した。そこで、本研究では、アザ糖の輸送機構の詳細解明を進めるために、① 含量の限られたアザ糖とその代謝物を正確に分析するための方法を開発する。② 臓器への分布を評価する。そして、輸送機構をもとに、アザ糖の臓器への取り込みを制御することで、生理活性の増強などアザ糖のさらなる有効な利用につなげることを目指した。 これまでのLC-MS/MSでのアザ糖分析法を発展させ、高感度かつ代謝物を含めた分析を可能にするために抽出法、LC、MSのそれぞれを改善を試みた。LCでの分離の検討を進め、移動相やカラムによって分離が大きく変化することを見出した。保持を変化させることで、結果的にアザ糖の分析の高感度化につながる可能性を見出している。また、分離のみでなく、移動相中のアンモニウム塩の違いによって感度も変化することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物実験での吸収・代謝の評価に先立ち、分析法の検討を進めた。移動相の溶媒や添加する酸・塩によるLCでの分離とMSでのイオン化効率の変化を比較評価した。これまでは、アセトニトリル水ギ酸による分析を行ってきた。酸やアンモニウム塩の検討により分離が大きく変化することを見出した。有機溶媒比率はMSでの感度(イオン化効率)に関わることから、保持の制御が感度向上に有効であると考えている。また、アンモニウム塩の種類によってもMS感度が変化することを見出した。これまでの分析法の改善に直結する成果であり、今後の動物試験へとスムーズに移行できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
LC-MSでの分析での感度はMSの性能に大きく依存する。ここまでの成果は、高性能なMSでなくとも高感度な分析を達成することにつながる結果である。これまでの知見をもとに、分析法を最適化する。そして、実際の動物試料へと適用することで、これまで以上に汎用性の高い分析法を構築する。構築した分析法を利用し、ラットでのアザ糖の臓器分布を評価し、臓器への移行性の改善を目指す。同時に代謝物の探索を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
分析の検討が中心で動物実験を実施しなかったこと、カラムもキャンペーンなどで安価に入手できたため次年度使用額が生じた。 今後は、動物の飼育およびその試料の調製に関わる消耗品、物品の購入を計画している。
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