アザ糖は、桑葉に多く含まれる糖と類似した構造のアルカロイドであり、糖尿病などへの有効性が期待されている。アザ糖は生体内へと吸収されるため、生理作用や安全性の評価のためには、体内動態の評価が重要である。本研究では、アザ糖の代謝物の解析のための分析法の構築し、アザ糖の代謝や臓器中の分布評価を行った。さらに輸送機構の評価によって、臓器中への取り込み量などを制御することで、アザ糖の生理活性の向上につなげることを目指した。 まず、アザ糖の代謝物分析のための分析法の検討を進めた。HPLCでの移動相への添加剤(酸やアンモニウム塩)を検討したことにより、いくつかのアザ糖の立体異性体の分離が可能となった。また、炭酸水素アンモニウムの使用により、分離と感度を併せ持つ分析が可能となった。含有量が少ない未知の代謝物の分析のために、分離精度が高く感度も高い本分析法が有効であると考えている。 構築した分析法を活用し、いくつかの代謝物の分析を実施した。これまでの研究で、桑葉を投与した際には、桑葉中のアザ糖の一種ガラクトピラノシル-DNJ(GAL-DNJ)がDNJへと代謝されることを見出していた。その代謝の詳細な検討を進め、代謝によりDNJとなることが、吸収性と生理活性の向上に繋がる可能性を明らかにした。さらに、ガラクトシダーゼにより摂取前にもGAL-DNJの分解を進められ、桑葉のより有効な利用につながることがわかった。生体中でのアザ糖の代謝の評価のために、DNJを長期的に投与したラットの臓器を分析した。しかし、臓器中からは含量が少ないためか代謝物を検出することができなかった。より含量が多いと考えられる尿や血液中の解析を現在進めている。
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