研究課題/領域番号 |
21K20727
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
澤崎 鷹 和歌山県立医科大学, 薬学部, 助教 (20911671)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | アミロイド / 自己会合 / 単結晶X線構造解析 / 非天然アミノ酸 / 液液相分離 |
研究実績の概要 |
ペプチドやタンパク質が溶液状態からアミロイド繊維化する過程において、液滴を一過的に経由し、固体化(繊維化)する液液相分離が提唱されている。この液滴は、規則正しく分子が配列した状態であるアミロイドの前段階であることから、分子間相互作用による会合状態であることが想定される。本研究では、自己会合性ペプチド配列の構造等を原子レベルで最適化することで、安定化された会合状態を経てアミロイド化するタンパク質を創製し、その会合状態を解明することを目的とする。初年度ではまず種々の自己会合性ペプチド・タンパク質を合成することを計画した。 アミロイド化することが知られているタンパク質として、FUS、タウやα-シヌクレインなどがあるが、これらのタンパク質は液液相分離に重要な自己会合性配列を含むことが知られている。そこで始めに、自己会合する部分配列を中心とした配列の合成を検討することとした。非天然構造を組み入れた誘導体の合成も見据えて、固相合成に基づく合成ルートを確立した。すなわち、ケミカルライゲーション法により、短鎖同士を合成終盤に連結して、目的物を得ることとした。固相合成で合成可能な配列及び長さのチューニュングや、ライゲーション法の条件探索の結果、高い自己凝集性を有するペプチド・タンパク質であっても、合成可能な優れた合成法を見出した。さらに本合成法の確立と並行して進めていた、非天然アミノ酸の合成研究で得られた化合物に対しても適用できることが明らかになった。合成物の自己凝集性をチオフラビンTアッセイや、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、高速液体クロマトグラフ(HPLC)等を駆使し、評価するとともに、単結晶X線構造解析に向けた結晶化を検討しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
合成物の高い自己凝集性に反映して、目的の反応の進行が遅いことや、水溶性の大幅な低下に由来した精製が困難になる等の問題もあったが、適切なタイミングにおけるDMSOなどの有機溶媒や界面活性剤、ウレア変性の利用が効果的であることを見出し、化学合成の手法を確立した。またN末端や、C末端の自在な化学修飾も可能にした。しかし依然、高効率に合成はできていないことから、単結晶X線構造解析に向けた結晶化を見据えて、生成物の大量供給を可能とする、より優れた合成法を探索していく。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き合成を進め、構造解析や凝集化に関するアッセイを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度では、所有する装置を最大限利用するのみで、十分に研究をすすめることができた。一方次年度で計画されている構造解析や液液相分離のアッセイなどは、高額な試薬などの購入が見込まれている。そのため、本年度の繰越額と合わせることで、円滑に研究を推進する予定である。
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