令和4年度では、令和3年度に引き続き計画概要として掲げていた“ヒト脳腫瘍血管バリア (BBTB) モデルの構築及びそのBBTB特性解析”に注力して研究を遂行した。 前者の“モデル構築”について、令和3年度においてはグリオーマを核としてその周りを本研究室で樹立したヒト不死化アストロサイトHASTR、そして更にその周囲をヒト不死化脳毛血管内皮細胞HBMECで覆った形態でのBBTBモデルの構築についての検討をおこなっていた。これに対し、令和4年度では上記モデルの構築について検討の続きをおこなってきたが、構築法の観点から安定してモデルを構築することが困難であることが示唆された。この結果を受け、構築法の改善を試みるとともに、本研究室にて樹立したヒト不死化ペリサイトHBPCを更に加えることで、より生体模倣性を高めたBBTBモデルの構築を試みた。その結果、メチルセルロースを用いた培養法により、HASTRとヒトグリオーマ細胞が均一に分布した細胞塊を核として、その周囲にHBPCとHBMECが覆うような形態で、以前検討していたBBTBモデルと比較して安定したBBTBモデルの構築が可能となることが明らかとなった。 後者の“BBTB特性解析”については、上記にて構築したモデルが有するバリア機能の解析をおこなった。グリオーマを含まないBBBモデルと比較した結果、そのバリア機能はBBBと同等であるという結果が得られた。これは、令和3年度よりおこなっていた2次元型のBBB/BBTBモデルを用いたバリア機能解析結果と同じ傾向を示していた。また、2次元および3次元のBBB/BBTBモデルを構成するHBMECにおける遺伝子発現についても解析をおこなうことにより、BBTBを構成するHBMECに高く発現する遺伝子の候補を見出すことができた。
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