放射線治療はDNA損傷を引き起こして腫瘍成長を抑制するがん治療法で、非侵襲性・局所治療のため患者のQOLが高い。一方で放射線は腫瘍以外にも増殖が盛んな骨髄細胞・上皮細胞に放射線障害を引き起こし、特に造血幹細胞の障害は免疫細胞の急激な減少(骨髄抑制)を引き起こし、免疫低下を引き起こす。このため放射線治療では正常組織の障害を防ぐことが重要であり、放射線の正常組織への障害を軽減する放射線防護剤の開発が求められる。 以前に当研究室ではATP・ADPが気道上皮細胞の放射線障害を軽減させること、中脳アストロサイト由来神経栄養因子(MANF)が放射線照射後の細胞外に放出をも明らかにした。一方、グアノシン三リン酸(GTP)の放射線細胞応答への関与は不明である。またMANF添加による放射線防護効果についても不明である。 本研究では、ヌクレオチドGTPおよび神経栄養因子MANFに注目し、放射線治療時の正常組織に対する放射線防護剤の開発を目指し、GTPおよびMANFの放射線防護効果をin vitro、ex vivo、in vivo実験にて明らかにする。 本年度は放射線障害へのGTPやMANFの効果とそのメカニズムの検討を行った。GTPやMANFはp38 MAPKのリン酸化、DNA損傷応答、細胞周期の停止を制御することで骨髄、脾臓細胞の放射線誘導の細胞死を軽減することが見出された。 またGTPやMANFの投与は放射線障害モデルマウスにおける骨髄、脾臓、血液細胞の減少を顕著に回復させたことから、放射線障害の軽減効果についても示唆された。 これらの内容を論文として報告する準備を行っている。
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