研究課題/領域番号 |
21K20735
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
増本 直子 国立医薬品食品衛生研究所, 食品添加物部, 主任研究官 (70754034)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 相対モル感度 / クロロゲン酸類 / カフェ酸 / カフェイン / 定量NMR / クロマトグラフィー |
研究実績の概要 |
天然由来の添加物や生薬のような資源を有効かつ安全に活用するには,含まれる有用な成分や有害成分の量を正しく把握することが肝要である.しかし,目的の成分を定量するために必要な定量用標品の入手が難しい場合が多々あり、不正確な定量値しか得られないケースも少なくない.本研究では天然由来製品に広く含まれ,機能性も期待されるクロロゲン酸類を対象とした,相対モル感度(RMS)を用いた定量法(RMS法)を開発することを目的としている.このとき,RMS法を用いた定量で見られる装置間差についてや,市販試薬すら得られない化合物のRMS値の予測について,知見を得ることも目指している. クロロゲン酸類は桂皮酸誘導体とキナ酸のエステル化合物であり,キナ酸に結合する三の種類や位置の違いにより多くの化合物種が存在する.市販試薬はあるが高価なもの,市販試薬すらないものも多い.R3年度は,多種のクロロゲン酸類を含む食品添加物「生コーヒー豆抽出物」を用い,含まれるクロロゲン酸類をHPLCにて一斉に分析可能な条件を検討した.生コーヒー豆抽出物には,桂皮酸誘導体であるカフェ酸やフェルラ酸がひとつまたはふたつキナ酸に結合したクロロゲン酸類が含まれていた.一方,RMS法を用いるための基準物質として,カフェ酸,クロロゲン酸(5-カフェオイルキナ酸),カフェインを選定し,各クロロゲン酸類に対するRMS値を算出した(検出器はPDAおよびUV,HPLCは2装置使用).対象としたクロロゲン酸類のうち市販されていないものは単離精製して得ており,現在も単離精製中の化合物がある.現時点で得られた結果からは,HPLCの検出器がPDAやUVのとき,発色団の構造が同じで数や位置が異なるのみの場合には,ある程度RMSが予測できそうであると思われる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
R3年度に予定していたクロロゲン酸類の分析条件の決定や基準物質の選定,相対モル感度(RMS)の算出はおおむね終了した.しかし,研究を進めていく上でより知見を得るために,当初予定していたよりも多くの化合物についてRMSを算出したいと考え,一般に市販されている以外のクロロゲン酸類縁体を単離精製するという工程が加わったことにより,少し遅れが生じた.クロロゲン酸類縁体の単離精製は順調であり,当初考えていたより多くの知見が得られると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
R4年度は,現在進めているクロロゲン酸類縁体の単離精製を進める.その後,予定しているすべての化合物について,昨年度選定したすべての基準物質について相対モル感度(RMS)を算出する.この結果をもとに,市販試薬が得られない化合物のRMS値の予測の可能性について考察する. 一方で,RMS法の装置間差を補正する手法として考えている化合物を用い,クロロゲン酸のRMSについて補正が可能か確認する.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入しようと思っていた化合物も単離精製したため,試薬代と考えていた分、次年度使用額として生じた.相対モル感度(RMS)を算出する対象化合物の数も増えたため,次年度使用額に回った分は,主にRMS算出に必要な試薬類で使用する予定である.
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