天然由来資源を添加物や生薬などとして有効かつ安全に活用するには,含まれる有用な成分や有害成分の量を正しく把握することが肝要である.しかし,目的の成分を定量するために必要な定量用標品の入手が難しい場合が多々あり、不正確な定量値しか得られないケースも少なくない.本研究では天然由来製品に広く含まれ,機能性も期待されるクロロゲン酸類を対象とした,相対モル感度(RMS)を用いた定量法(RMS法)を開発することを目的とした.このとき,RMS法を用いた定量で見られる装置間差についてや,市販試薬すら得られない化合物のRMS値の予測について,知見を得ることも目指した. クロロゲン酸類は桂皮酸誘導体とキナ酸のエステル化合物であり,キナ酸に結合する三の種類や位置の違いにより多くの化合物種が存在する.市販試薬はあるが高価なもの,市販試薬すらないものも多い.R4年度は,R3年度に単離精製した,カフェ酸の結合数の異なるクロロゲン酸類を用いて,カフェ酸を基準物質としたRMSを算出した(検出器はPDAおよびUV,HPLCは2装置使用).発色団であるカフェ酸がひとつで結合位のみが異なる場合,RMSの値は一致した.発色団であるカフェ酸がふたつの場合,RMSの値は概ね2倍になったが,立体障害があると予測される場合には2倍より小さな値となった(本研究では5%程度).しかし,純度不明の貴重あるいは高価な試薬を用いて定量のために検量線を作成することを考えると,構造からある程度のRMSが予測可能であることが示された本結果はの知見は意義があると考える.一方,装置間差の校正については,校正のための考え方とどのような条件の化合物を校正物質として用いればよいかという点,その校正物質候補までは得たが,校正手法を確立するにはさらなる検討が必要である結果となった.この点に関しては引き続き研究を行う.
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