研究課題/領域番号 |
21K20745
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
市野 紀子 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特任研究員 (40649365)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | リポソモパシー / H-ACA snoRNP / 骨格筋萎縮 / サルコメア / トランスクリプトーム解析 / ゼブラフィッシュ / GAR1 / P53 |
研究実績の概要 |
リボソーム生合成因子rRNAのシュードウリジル化修飾を担うH/ACA snoRNPのサブユニットGAR1を欠損したゼブラフィッシュGBT0434変異体(gar1mn0434Gt/mn0434Gt)において、サルコメア異常および骨格筋萎縮を発現することを初めて見出した。GAR1と骨格筋萎縮との関係には、不明な点が多く残されており、脊髄性筋萎縮症の原因遺伝子SMN1が、H/ACA snoRNPアセンブリに関与する可能性が示唆されている。このGAR1欠損ゼブラフィッシュに発現する骨格筋萎縮の病態メカニズムを明らかにするため、令和3年度は、GAR1欠損によるH/ACA snoRNP機能異常による骨格筋萎縮が、p53依存的または非依存分子メカニズムのどちらを介しているがについて検証する。具体的には、ゼブラフィッシュp53遺伝子がコードする少なくとも3種類のp53アイソフォーム(Zp53、ZΔNp53、ZΔ113p53)が存在するあるため、Morpholino Antisense Oligonucleotide(MO)を用いて、GBT0434変異体(gar1mn0434Gt/mn0434Gt)におけるp53アイソフォームすべてを発現抑制させることにより、骨格筋の定量的な病態解析を実施することを計画した。ゼブラフィッシュGBT0434変異体の凍結精子と野生型卵を用いた人工授精を試み、GBT0434変異体ヘテロ接合体を獲得した。このGBT0434変異体と野生型をさらに交配させて得た次世代(F1)を本研究に用いることを予定している。3種類のp53アイソフォームを特異的に発現抑制させるMOをデザインし、複屈折光を用いた骨格筋の定量的病態解析法の検討を行った。RNA sequencing解析のために幼生のジェノタイピングが必須のため、低侵襲に採取した細胞を用いたジェノタイピングの条件を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GBT0434変異体は、前所属(Mayo Clinic)において凍結精子として保存したため、本研究を開始するにあたり、凍結精子と野生型雌の卵を用いて人工授精させることによって、ヘテロ接合体を獲得した。さらにヘテロ接合体が成熟した後、野生型雌と交配し、次世代のヘテロ接合体(F1)の幼生を現所属(順天堂大学)へ分譲する予定となっているが移送の手続きに時間を要している。現所属におけるGBT0434変異体(遺伝子組換え体)を用いた実験計画書は承認されており、GBT0434変異体の移送が完了次第、本研究を遂行することが可能となる。 令和3年度の進捗状況は、p53依存的分子メカニズムを介しているか否かを検証するために、ゼブラフィッシュp53遺伝子がコードする少なくとも3種類のアイソフォーム(Zp53、ZΔNp53、ZΔ113p53)全てをノックダウンする必要があり、p53の開始メチオニンをターゲットとしたMOに加えて、イントロン2に含まれるcryptic exonをターゲットとしたMOとZΔ113p53の開始メチオニンをターゲットにしたMOをデザインした。 骨格筋の定量的病態解析を実施するために、現所属先が所有する実体顕微鏡において、着脱可能な偏光フィルターを設置し、別のゼブラフィッシュ系統を用いて骨格筋の定量的病態解析が実施可能であることを確認した。 本研究において、RNA sequencing解析を予定していることから、受精3日齢未満の(体長約2㎜)の幼生のジェノタイピングが必須である。Zebrafish Embryo Genotyper(ZEG)を用いて、表面加工したスライドガラス状で幼生を振動させることにより、低侵襲に上皮細胞を採取し、gar1mn0434Gtアレルのゲノム領域をPCRで増幅させることにより、ジェノタイピングの条件検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
GBT0434変異体のヘテロ接合体幼生(F1)の移送が完了した後、現所属内のゼブラフィッシュ飼育設備において成熟させ、さらにヘテロ接合体(gar1mn0434Gt /+)の雌雄を交配して得た受精卵に対して、3種類のMOを用いて導入して接合体(gar1mn0434Gt/mn0434Gt)のp53アイソフォームを発現抑制する。 p53アイソフォームの発現抑制によりGBT0434変異体の病態が回復する場合、CRISPR-Cas9によるゲノム編集を実施して、p53およびそのアイソフォームのKOゼブラフィッシュを構築し、gar1欠損による病態は、p53依存的分子メカニズムを介して誘導されることを検証する。<令和4年度末> p53活性亢進を抑制することによりgar1欠損による病態(運動神経および骨格筋病態など)に変化が見られない場合(シナリオII)、p53非依存的な新規分子メカニズムの探索を目的としたRNA sequencing解析を実施する。<令和4年度半期> 並行して、CRISPR-Cas9による遺伝子ノックアウトおよびノックイン技術を活用し、gar1欠損によるp53非依存的な新規分子メカニズムのバリデーションを実施する。<令和4年度末>
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次年度使用額が生じた理由 |
GBT0434変異体は、前所属において凍結精子として保存したため、本研究を開始するにあたり、凍結精子と野生型雌の卵を用いて人工授精させることによって、ヘテロ接合体を獲得し、人工授精で得られたヘテロ接合体が成熟した後、野生型雌と交配し、次世代のヘテロ接合体(F1)の幼生を現所属へ移送する予定となっているが、人工授精から個体の移送までの各種手続きに時間を要しており、令和3年度の研究計画がやや遅れている。GBT0434変異体の移送が完了後に、令和3年度における研究計画の大半を遂行する可能となるため、次年度使用額が生じた。
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