研究課題
喘息をはじめとするアレルギー性疾患の患者数は先進国、発展途上国を問わず増加の一途をたどっている。アレルギー性疾患の発症・悪化には、抗原と反応したeffector Th2細胞からのmemory Th2細胞形成が主要な役割を果たしている。我々は近年新たに、酸化ストレス除去機構の制御因子であるTxnipがmemory Th2細胞形成に必要であることを明らかにした。本研究ではマウス喘息モデルの病態形成に対するTxnipの働きを明らかにすることで、アレルギー性疾患および喘息の新規治療法開発への分子基盤の構築を目指した。本研究は、Txnipを研究対象として用いることで、これまで未解明であった「喘息の病態形成における酸化ストレス量制御の役割」を明らかにすることを目的とした。これまでの研究により我々は、Txnipを欠損したTh2細胞では、酸化ストレス量が上昇し、アポトーシスが亢進することを発見している。また、Txnip欠損Th2細胞から形成されるmemory Th2細胞の数は、野生型と比較して減少することも確認している。さらに本補助事業期間においては、下記の内容を明らかにした。①マウス気道炎症モデルを用いた際に、T細胞特異的なTxnip欠損マウスでは、肺中のmemory CD4 T細胞数が減少し、気道への炎症細胞浸潤が減弱していた。②Txnip過剰発現Th2細胞を移入したマウスにおいては、反対に気道炎症病態の悪化が観察された。つまり、Th2細胞中のTxnipはmemory Th2細胞形成の促進を介して、気道炎症病態を悪化させることが明らかとなった。以上のように、Txnipが気道炎症病態に影響することは新たな発見であり、酸化ストレス量の制御機構を標的としたアレルギー性疾患の新規治療法開発につながる可能性があると考えられる。
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