研究実績の概要 |
EBウイルス関連血球貪食性リンパ組織球症(Epstein-Barr virus-associated hemophagocytic lymphohistiocytosis; EBV-HLH)の病態解明のため、比較対照として伝染性単核症(EBV-IM)1例の追加解析を行い、合計してEBV-HLH症例3例、EBV-IM症例2例の急性期および回復期の血液検体、健常成人2例の血液検体を用い、シングルセルシーケンスによる解析を行った。1検体あたり1,171-4,938(中央値2,833)細胞、計37,405細胞の末梢血単核球が解析に進むことが可能であった。全血のウイルス核酸定量検査結果で高ウイルス量を示したEBV-HLH3例全例でEBV関連遺伝子の発現を認める細胞群を抽出することが可能であった。一方で、ウイルス量が比較的低値であったEBV-IM例では、EBV関連遺伝子が検出された細胞は計3細胞にとどまった。遺伝子発現パターンに基づいたクラスタリング解析を行い、各クラスタでの発現遺伝子より所属する細胞分画を特定し、EBV関連遺伝子の発現がみられた細胞群について、その所属する細胞分画が従来法で確認されている感染細胞と一致することを確認した。さらに、各クラスタの細胞数の割合や遺伝子発現について比較検討を行った。EBV-HLHは3例ともに異なる背景疾患をもち、各クラスタの分布も異なっていたが、共通して単球系の活性化やインターフェロンシグナリングの活性化に関わる遺伝子の発現増強がみられた。一方で、EBV-IMの急性期に特異的に出現するCD8陽性T細胞クラスタを特定し、本クラスタで細胞周期やアポトーシスに関わる遺伝子発現増強が確認された。EBV-HLHでは共通して本クラスタの出現が乏しく、CD8陽性T細胞の分化誘導障害が病態に関連していることが示唆された。
|