研究課題/領域番号 |
21K20762
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
古山 若呼 長崎大学, 感染症共同研究拠点, 助教 (60908903)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | エボラウイルス |
研究実績の概要 |
エボラウイルス病はエボラウイルスによる感染症であり、ヒトを含む霊長類に重篤な出血熱を引き起こす。しかしながら、現在エボラウイルスに対する予防、治療法は限定的である。また、その病原性の高さから高度安全実験施設(BSL-4)での取り扱いが義務付けられているため、野生型エボラウイルスを用いた研究は極めて制限されている。本研究では、野生型ウイルスの生活環を模倣し、BSL-2での取扱いが可能なエボラウイルス様粒子(VLP)を基盤とし、VLPを構成する主要なエボラウイルス因子に蛍光タンパク質を融合することで、一連の生活環をリアルタイムで可視化できる新規システムの確立を目的とする。 エボラウイルスVLPは3種のエボラウイルス構造タンパク質(VP40, NP, GP)発現プラスミドを哺乳類細胞に形質導入することにより作出可能である。本年はまず、エボラウイルスの表面糖タンパク質GPに蛍光タンパク質を融合し、このGPが野生型GPの性状を保持しているか中和活性等により確認を行った。次に、蛍光GP発現プラスミドとVP40、NP発現プラスミドを細胞に同時に形質導入し、蛍光VLPを調整した。蛍光VLPの形状ならびに各タンパク質が野生型を模倣しているか電子顕微鏡、ウェスタンブロッティング法にて確認を行い、野生型と差異がないことを確認した。そして、蛍光GP遺伝子を発現する、エボラウイルスの生活環を模倣する複製可能なエボラウイルス様粒子trVLPの作出、性状解析、最適化を行い、さらに、共焦点顕微鏡を用いて、細胞侵入過程からウイルス粒子形成までの一連のウイルス生活環におけるGP動態の可視化が可能であることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究代表者は野生型エボラウイルスの生活環を模倣する複製可能なエボラウイルスVLP (tetracistronic Ebola virus VLP, trVLP)を基盤として、ウイルス生活環を構成する各プロセスをリアルタイムに可視化できる新規システムを樹立、その性状解析を行うことを目的として研究に熱心に取り組み、研究計画調書に記載した研究計画を着実に遂行し成果を出している。本年度は蛍光GPの作出、蛍光GPを纏ったウイルス様粒子の作出、そして蛍光GP遺伝子が組み込まれたtrVLPの作出、性状解析を行った。さらに蛍光GP以外にも蛍光VP40、NPを用いてVLPの作出を行うなど、当初の研究計画よりも発展した研究を行っているため、区分は(1)当初の計画以上に進展している。とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は得られた蛍光trVLPについて、粒子形態および複製時における細胞内局在の継時的変動を、それぞれ電子顕微鏡および共焦点レーザー顕微鏡を用いて検討し、さらに蛍光シグナルの定量化を試みる。また、蛍光VLPが野生型エボラウイルス感染細胞で認められる現象を反映しているか米国国立アレルギー感染症研究所BSL-4施設にて比較解析を行う予定であるが、受け入れ先の状況次第である。 また、蛍光GP遺伝子発現trVLPの詳しい性状解析を行い、学術誌に成果をまとめる予定である。
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