エボラウイルスは高い致死率を伴う重篤なエボラ出血熱(エボラウイルス病)を引き起こす病原体である。エボラウイルスはその病原性の高さから高度安全実験施設(BSL-4施設)での取り扱いが義務付けられており、野生型エボラウイルスを用いた研究は極めて制限されている。これに対して、エボラウイルスの増殖に必要最低限の遺伝子のみを内包し、BSL-2で感染サイクルを再現できるエボラウイルス様粒子tetracistronic transcription- and replication-competent virus-like particles(trVLP)がこれまでに開発されている。 本研究では、この系を応用し、エボラウイルス表面糖タンパク質GPに蛍光タンパク質を融合させることにより、蛍光顕微鏡下にてリアルタイムの観察を試みた。蛍光タンパク質を融合させたGPはその性状が変化する可能性があるが、野生型のGPと比較解析した結果、立体構造や感染性への変化は観察されなかった。また、蛍光顕微鏡下にて観察を行ったところ、蛍光タンパク質融合GP発現trVLPが、野生型trVLPと同様の細胞侵入を示すことが判明した。さらに、蛍光タンパク質融合GPがゴルジ体に局在しており、野生型と同様であることが判明した。本研究にて、BSL-2 環境下においてウイルス侵入から粒子形成までの一連のウイルス生活環を追跡可能とする新規システムの開発に成功した。
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