研究課題
本研究は脂質代謝によるT細胞の分化制御機構に着目し、我々が以前同定した病原性Th2(Tpath2)細胞および2型自然リンパ球(ILC2)などの喘息を誘導する病原性細胞特異的な脂質代謝機構を明らかにし、脂質代謝によって免疫機能を制御することを目的とした。脂肪酸合成の律速酵素であるACC1のコンディショナルノックアウトマウスおよび阻害剤を用いて実験を行った結果、以下の新たな知見を見出した。1. De novo脂肪酸合成によるIL-5産生の制御機構:我々はACC1阻害剤、T細胞特異的およびタモキシフェン誘導型CreリコンビナーゼシステムによってT細胞からACC1を抑制・ノックアウトすることでメモリーTh2細胞やILC2のIL-5産生が著しく抑制されることが示された。さらにTpath2によるIL-5産生には十分な量の脂肪酸に加えて解糖系の十分な活性化が必要であることを見出した。2. T細胞特異的ACC1欠損マウスにおける喘息病態の抑制:1で明らかになったde novo脂肪酸合成依存的なIL-5産生機構が喘息病態に影響するかをT細胞特異的にACC1を欠損するコンディショナルノックアウトマウスを用いて検証した。IL-33/papain/OVA+Alumなど様々なモデルで気道炎症を誘導した結果、いずれにおいてもコントロールに比べACC1欠損群のST2+CD4T細胞が産生するIL-5が減少し、肺胞洗浄液中の好酸球を含む細胞数が著しく減少した。また、肺組織のHE染色像では気管支周囲の炎症の減弱と炎症細胞の減少を認めた。3. ACC1欠損マウスにおけるアトピー性皮膚炎病態の抑制:1.2で得た知見をアトピー性皮膚炎病態モデルマウスに応用したところ、T細胞特異的あるいは皮膚ACC1の抑制・欠損は皮膚T細胞のIL-3産生を抑制し好塩基球の活性化を抑制することで皮膚炎症が抑制されることを見出した。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件)
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