研究課題/領域番号 |
21K20777
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
中村 梨沙 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (50645801)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 住血吸虫 / 宿主自然免疫 / 寄生虫-宿主間相互作用 |
研究実績の概要 |
住血吸虫症は、全世界で2億人以上が罹患する重篤な”顧みられない熱帯病”である。重篤な病態の主体は体内に蓄積された虫卵であるため、幼虫の成長・産卵の制御は病態の抑制と伝播阻止に重要である。免疫応答が正常に機能しないマウスでは、住血吸虫の成長が阻害される。住血吸虫は宿主免疫機構を利用し成長・産卵することが示唆されるが、成長・産卵を促進するinitiation factor が存在するのか、いつ・どこで・どのように幼虫に影響を与えるのかは不明である。そこで本研究は、宿主の自然免疫細胞が住血吸虫の成長・産卵を促すinitiation factor であるという仮説を住血吸虫感染マウスモデルを用いて検証した。 まず、一部の自然免疫細胞を欠損したマウスで見られる住血吸虫の成長不良がいつ、どこで起こるか、感染マウスを経時的に解析した。その結果、虫体数及び肝の虫卵数の減少は、感染2週以降に、腸管静脈への寄生時に起こることが示唆された。さらに、一部の自然免疫細胞がこの成長不良に関与するのか検証するため、住血吸虫感染マウスへの抗体投与実験ならびに細胞移入実験を行った。種々の免疫細胞を欠失させたり、移入し補うことで、住血吸虫の成長・産卵への免疫細胞の影響を宿主生体内で観察することができた。今後も引き続き住血吸虫の成長不良・虫卵数の減少に影響する宿主自然免疫細胞および免疫因子の特定とその機序を解析していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、R3年度に予定していた研究計画を実施し、ある程度の結果を得ることができた。R3年度は、一部の自然免疫細胞の欠損で見られる住血吸虫の成長不良に影響を及ぼす場・時期を特定するため、まず、一部の自然免疫細胞を欠損したマウスで見られる住血吸虫の成長不良がいつ、どこで起こるか、感染マウスを経時的に解析した。結果、感染1週間後の肺寄生時には住血吸虫数の差異は認められなかった。一方、感染5週以降の腸管静脈寄生時には虫体の成長不良、虫体数および肝の虫卵数の減少が見られた。このことから、一部の自然免疫細胞の欠損による住血吸虫の成長不良は、肺ではなく、感染2~5週目の腸管静脈寄生時に起こることが示唆された。 また、initiation factorとして住血吸虫の成長に関与すると仮説をたてた自然免疫細胞の影響を明らかにするため、当該細胞を欠失させる抗体投与実験や、当該細胞のin vivo 養子移入実験も実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、住血吸虫の成長に関与すると考えられる一部の自然免疫細胞の影響を明らかにするため、当該細胞を欠失させる抗体投与実験やin vivo 養子移入実験の再現性を取る必要がある。また今後は、住血吸虫の成長に関与する自然免疫細胞の動態及び生理活性物質産生能と住血吸虫の成長・産卵の相関性を探る。さらに、in vivo の免疫学的解析を中心に行い、住血吸虫の成長・産卵を促す免疫因子の特性と機序を明らかにしていく。
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