研究課題/領域番号 |
21K20781
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
横井 愛香 北里大学, 医学部, 助教 (90907148)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 子宮内膜癌 / morule / EBP50 / PTEN過剰発現 / β-カテニン |
研究実績の概要 |
本研究は「MPA療法による子宮内膜癌細胞からmorule細胞への転位分化起点シグナルとして、ER/EBP50の発現消失による細胞極性の消失と、引き続き活性化されるβ-カテニン/PTEN経路が重要である」という仮説を立証することを目的としている。 まず、正常子宮内膜生検検体26症例(増殖期:8例、分泌期早期:10例、分泌期中/後期:8例)を用いてEBP50の免疫組織化学的検討を行った。一般的に増殖期ではエストロゲン量が多く、分泌期では低下するが、EBP50は増殖期で細胞膜、細胞質に高発現し、分泌期では細胞質発現が低下していた。このことから、EBP50はエストロゲン依存性であることが示唆された。 次に、子宮類内膜癌病理検体100症例(Grade1:36例、Grade2:33例、Grade3:31例)を用いて免疫組織化学的検討を行った。悪性度に相関して、EBP50は細胞膜発現低下と細胞質/核発現の増加、ER及びβ-カテニン細胞膜/核発現の低下が示された。PTENは変化がみられなかった。一方でmorule細胞に注目すると、EBP50、 ER発現の低下、PTEN過剰発現、β-カテニンの核内移行を示していた。PTEN、β-カテニン関連因子であるp-Aktは低下し、GSK3βは増加していた。さらには、癌幹細胞マーカーCD44、CD133、ALDH1や上皮間葉転換マーカーTwist1の発現増加が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一段階として臨床検体においてER、EBP50、β-カテニン及びPTENの分子動態を免疫組織化学的に検証すること、第二段階として、morule細胞の生物学的特性を解明するために上記分子に加えて、癌幹細胞マーカー及びEMTマーカーについて検討することを計画し実行した。morule細胞にてPTEN過剰発現を示したことから、次なる段階として、子宮類内膜癌培養細胞でPTENの恒常的過剰発現系を作製し実験を進めている。よって、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
作製したPTEN恒常発現系細胞株において、ER、EBP50、β-カテニン発現動態の検証を行う。また、臨床検体において癌幹細胞マーカーの発現増加がみられたことから、癌幹細胞化の検討を行っていく。臨床検体の次の段階としては、MPA療法との関連を中心に検討する。MPA療法による経時的病理組織像の変化(morule巣の形成・増大)や、MPA療法とER/EBP50/β-カテニン/PTEN経路との関連性を検証していき、最終的にmorule像をターゲットとした子宮類内膜癌に対するMPA療法の有益な新規治療効果判定・予後予測システムを構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
おおむね順調に研究は遂行しており、次年度の研究計画の実行に必要であると判断したため。
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