本研究は「MPA療法による子宮内膜癌細胞からmorule細胞への転位分化起点シグナルとして、ER/EBP50の発現消失による細胞極性の消失と、引き続き活性化されるβ-カテニン/PTEN経路が重要である」という仮説を立証することを目的としている。子宮類内膜癌臨床検体100症例では、免疫組織化学的検討にて、悪性度に相関してEBP50は細胞膜発現が低下していた。morule巣では、EBP50、ER発現の低下、PTEN過剰発現、β-カテニンの核内移行を示し、PTEN、β-カテニン関連因子であるp-Aktは低下し、GSK3βは増加していた。更には、癌幹細胞マーカーCD44、CD133、ALDH1や上皮間葉転換(EMT)マーカーTwist1の発現増加が認められた。次なる段階として、morule巣を再現するため、子宮類内膜癌細胞Hec6細胞株を用いて、PTEN過剰発現系細胞株を作製した。PTEN過剰発現することで、細胞形態は紡錘形を示し、E-cadherin発現低下、Slug発現増加を示したことから、EMTが起きていることが示唆された。また、GSK3β活性は抑制され、リン酸化β-cateninは低下していたことからβ-cateninの分解が抑制されていた。さらには、増殖能は低下しており、その要因として、老化細胞が増加していたこと、アポトーシスが誘導されていることが分かった。臨床検体の結果より、癌幹細胞化について検討した。PTEN過剰発現細胞ではCD44、ALDH1発現が増加しており、臨床検体の結果と相違無い結果であった。ALDH活性を示す細胞は増加し、spheroid形成を示し、癌幹細胞化の現象を認めた。子宮類内膜癌において、PTENが過剰発現することで及ぼす影響について明らかとなった。
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