研究実績の概要 |
私たちは中枢神経系(CNS)に生じる神経変性病態において、細胞障害性プロテアーゼGranzyme B(Gzmb)を産生するEomes陽性Th細胞(Eomes+ Th)は神経細胞死の原因となることを見出した。また、私たちが提唱する免疫依存性の神経変性病態では、先行する自律的な神経細胞死より提供される抗原依存性の活性化が、Eomes+ Th細胞による神経細胞障害に必要である。そこで私は全身性IFN-I過剰産生マウス(Trex1欠損マウス)やCNS特異的IFN-I過剰産生マウス(CX3CR1-Cre/USP18欠損マウス)を用いてEomes+ Th細胞の挙動を解析し、in vivoにおけるIFN-Iの過剰産生によりEomes+ Th細胞が誘導され、その一部はGzmbを発現することを明らかにした。一方、IFN-I過剰産生マウスは顕著な中枢神経症状は認めず、Eomes+ Thの誘導自体は直接に神経細胞障害を引き起こさないと考えられる。そのため、Trex1欠損マウスの皮質運動野にオカダ酸(Okadaic acid, OA)をmicroinjectionして局在的な神経細胞死を誘導し、Eomes+ Th細胞による神経細胞障害の拡大の有無を検証する実験は現在行っている。今後、IFN-I過剰産生マウスのCNS内にIFN-I関連分子と免疫細胞の局在を確認する。また、Gzmb発現を欠損するIFN-I過剰産生マウスにOAをmicroinjectionする。以上の実験によりEomes+ Th細胞とIFN-Iは神経細胞障害での役割を明らかにしたいと考えている。これらの結果から、IFN-I過剰産生が神経変性病態に詳細な分子機序の解明を期待している。
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